交際開始からご成婚までを共にするパートナー、それが私たち結婚相談所の役割です

福岡で200組以上のご成婚実績を誇るベテランカウンセラーがあなたの婚活をサポートする結婚相談所「エンジェルロード」

ご相談者様が結婚に対して何を求めているのかをしっかりとヒアリング、1年以内のご成婚を目標とした具体的な婚活計画を一緒にプランニング致します。
婚活は交際開始がゴールではありません、一生をともにする伴侶を決める大切な交際期間中に生じてくる不安や迷いについても、担当カウンセラーがマンツーマンでご相談に乗りますので、安心して当結婚相談所にお任せ下さい。

エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説21 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・取材で冨澤を尋ねた圭子は、道で転んでしまい冨澤の胸に抱きすくめられる。冨澤に懐かしい匂いを感じた圭子は・・・》

第4章  運命の赤い糸④

「本当に大丈夫ですか?」

「だ、だいじょうぶよ。ありがとう」

圭子は慌てて放り投げたバッグを拾いに走る。先に散らばった中身を拾い集めてくれていたカメラマンの水田も声をかけた。

幸い携帯も壊れていないようだ。着信を調べてみると茂木編集長だ。

(まったく間の悪い・・・。後でかけ直そう)

冨澤のマンションは歩いてすぐの場所にあった。圭子は恥ずかしさを隠すために、水田に後から行くと伝えマンションのエントランスに残り電話をかけることにした。

まだ顔に冨澤の匂いが残っている。手にも冨澤の胸の感触がある。痩せているのに胸板は厚かった。人見知りでボソボソとしか話さず、とても女性の扱いに慣れているとは思えそうもないのに、受け止めてくれた腕はしっかりと圭子の肩を掴んでいた。その力強い手はとても不器用な感じがして優しかった。

(あ!もしかしてTシャツに口紅が付いたんじゃ!)冨澤の真っ白いTシャツを思い出してまた恥ずかしくなった。

「もしもし、兵頭です。すいません、電話出れなくて」

「おう。どうだ?順調か?ちょっと変わったやつだから、注意しろよ」

「そんなことより、編集長また話が伝わってませんよ!顔は出さないでくれって言ってます」

「心配すんな。後でまた上手く話しておくから。そっちが終わったらでいいから勝木先生に連絡取ってくれ。」

そういえばしばらく勝木からの連絡がなかった。なんだか久しぶりに勝木の声も聴きたくなった。勝木なら今の圭子の心境の変化も見破ることが出来るだろうか。勝木のいたずら小僧のような眼が頭に浮かぶ。

圭子は冨澤に教えられた号室をインターホンで押しドアを開けてもらった。部屋に入る前にもう一度、呼吸を整え身づくろいをする。部屋に入るとカメラマンの水田が機材を準備しているのが見えた。冨澤というとキッチンの方でお茶の準備でもしているようだ。

「兵頭さん、先に冨澤さんから話を聞きますか?」

「あ、そうね。いや、先にバイクを整備している写真からにしましょう」

いきなり面と向かって話を聞くのはまだ照れくさい。さっきのことがあってから、冨澤の顔を見るのがなんとなく眩しい。しばらく水田に任せて時間を引き延ばそう。

そこへアイスコーヒーを入れたトレイを持って冨澤が現れた。改めて部屋を見てみると、男一人の部屋にしてはとても綺麗に片付いている。リビングも広く大型テレビの前にあるガラステーブルにも何もなくすっきりとしている。圭子の住んでいるマンションよりもかなり広い。これでバイクの専用ガレージまで地下にあるらしいから、家賃も相当するのだろう。こんなに広い部屋で一人で寂しくないのだろうか。これだけいい暮らしをしていて、おまけにそこそこの美男子なのにどうして結婚しないのだろう。

(女嫌いなのかな。もしかしてあっち?)ついつい余計なことばかり考えてしまう圭子だった。

「あの~、まず何をしたらいいですか?」冨澤の声で我に返る。

「先に、バイクの写真とバイクを整備している写真から撮らせてもらえますか?」

冨澤の案内で地下にある専用ガレージへと向かった。それぞれの車庫にシャッターまでついており、とても立派なものだ。車よりバイクの方が便利な都会では、バイクの車庫付きのマンションも最近は増えているらしい。

「わ!かっこいい!ファットボーイですね?」バイクを見るなり水田が駆け寄る。

「バイク乗るんですか?」冨澤も嬉しそうに答えた。

「僕はスポーツタイプばっかりです。いつかはハーレーに乗りたいんですけどね。まだハーレーが似合う年じゃないから・・・」

「いいですよ。ハーレーは。この音がたまらない。僕はずっと若いときからハーレーですけどね」

「冨澤さんはカッコイイからハーレー似合ってますよ。僕も早くハーレーが似合う渋い中年になりたいです」

「・・・・・・・・・・」

(それって俺は中年ってことかよ!)

「じゃあ、冨澤さん、まずはバイクの横に立って下さい。何枚か撮りますんで・・・」

それから二人はバイクの話を交えながら、リラックスしたムードで写真を撮り始めていた。圭子は少し離れたところから改めて博を見た。やっぱり俳優のY.Tにそっくりだ。缶コーヒーのCMに出ていて、最近はユーモラスな一面ものぞかせている。そういえばこの顔はニコニコ急便の宅配便のお兄さんにもなんとなく似ている。

(私ってこういう顔が好きなのかな・・・)

a0002_010182

「あ!水田君、ストップ!ちょっといったん止めて!」

「はい!どうしました?」

圭子は静かに博に立ち寄り小さな声で話しかけた。

「あの、すみません。Tシャツに口紅つけちゃったみたいです。ごめんなさい」

「?・・・え!あ、ほんとだ」

「後でクリーニング出しますから、預からせて下さい」

「いや、そんな!大丈夫ですよ。後で洗えばいいだけですから・・・」

「そうじゃなくて・・・。あの~写真に写り込んでしまうので・・・」

今度は同時に赤くなる圭子と博であった。その頬の赤味はちょうどTシャツに付いた口紅の色と同じような色をしていた。

つづく

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
九州・福岡の結婚相談所 Angel Rord
http://www.angelroad-co.com/
住所:福岡市博多区博多駅東1丁目12番5号
博多大島ビル2階
TEL:092-292-3339 FAX:092-292-3336
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑳ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・圭子は“趣味男の部屋”という連載記事に載せる為に、茂木編集長に従弟でバイク好きの独身男性を紹介されたのだが・・・。》

第4章  運命の赤い糸③

編集長に紹介された冨澤という男と待ち合わせたのは、北品川のファミリーレストランだった。圭子は外部に委託しているカメラマンと二人で向かった。水田というカメラマンはまだ若く、使い始めてまだ日も浅いのだが、編集に意図する写真を上手く撮ってくれて、何でもそつなく仕事をこなしてくれるのでとても重宝している。編集長は「荒削りだが、大胆な写真も撮る。うちでじっくりと育てていこうじゃないか」と顔をほころばせていた。

「水田君、今日はバイクの写真とそのオーナーの写真。バイクを整備しているところの絵もお願いね」

「分かりました。バイクならまかせて下さい。俺もずっと乗ってますから。今日はちょっと楽しみにしてたんですよ」

そういえば何度か、この水田というカメラマンも現場にバイクで直接来ていたことがある。圭子はバイクのことは詳しくなかったが、今日取材するハーレーのようなバイクではなかったと思う。もっとカラフルでサーキットで走るようなバイクだったはずだ。

土曜日のファミレスはお昼時ということもあり混んでいた。入り口近くの席で、水田と今日の段取りについて確認しているところへ冨澤という男がやってきた。入り口で周りを見渡しながら、きょろきょろしているのですぐに分かった。圭子が立ち上がると冨澤が近づいて来る。

「あのー、兵頭さんですか」

「はい。どうも初めまして。冨澤さんでいらっしゃいますね」

休日ということもあり冨澤は白いTシャツとジーンズというリラックスした服装で現れた。少し無精ひげが伸びている。仕事はエンジニアと聞いていたが、色白の優男風の体躯は学校の先生か銀行員のようにしか見えなかった。名前は思い出せないが、最近TVで水のCMによく出ている俳優にそっくりだ。そういえば何となく目から頬の辺りが茂木編集長に似ている。今まで茂木の私生活は謎で、一度結婚に失敗したという話を聞いたことがあるだけで、こうやって親戚が目の前に現れるとなんだか不思議な気がした。

「いつも義男兄ちゃん、いや茂木がお世話になっています」

「こちらこそ、編集長にはいろいろとお世話になっています。私は編集部の兵頭です。こちらはカメラマンの水田と言います。今日は宜しくお願いします」

あわてて茂木のことを義男兄ちゃんと言ったあと、少し顔を赤らめた様子が、圭子には好感がもてた。それから今日の撮影の段取りやインタビュー内容について確認をしたのだが、冨澤は意外なことを口にしたのだった。

「あのー、僕の趣味なんて大したことないですよ。バイクもハーレーといっても最近のやつだからそんなに珍しくもないし・・・。あと、僕の顔も出るのでしょうか?」

「顔は出ますけど、そんなに大きく写さないですよ。どちらかと言えば趣味の対象をメインにしますので・・・。」

おそらく茂木からは、簡単にしか説明を受けていないのだろう。直接、圭子に何とかさせようといういつもの編集長の手口だ。一般人が取材の現場ではよくあることだ。

「一度、撮影した写真や取材した原稿内容は、チェックして頂きますのでご安心下さい」

「分かりました。でも僕なんか大したことないのになあ・・・。もっとビンテージ物のバイクをたくさん集めている人知ってますけど、紹介しましょうか?」

「有難うございます。またお願いすることになるかもしれませんが、今日のところは予定通り取材させて下さい」

冨澤という男はよっぽど嫌だったらしい。従弟の頼みだからしかたなく話だけ聞いてやるかというつもりで会ってくれたのだろう。本来ならば直接自宅に訪問して取材してそれから写真撮影という流れになるのだが、先に一度、別の場所でお会いしてからという冨澤の申し出は、断れるものならここで断りたいという気持ちがあったのかもしれない。聞きしに勝る恥ずかしがり屋だ。話すときもうつむきながら小さな声でつぶやくように話す。

a0002_007327

それから3人は連れだって、歩いてすぐだという冨澤のマンションへと向かった。

「冨澤さん、茂木編集長とはたまに会われているんですか?」

「いえ、めったに会わないです。最後に会ったのはもう何年も前で・・・・」

道すがら冨澤の取材も兼ねて、いろんな質問もぶつけてみてもすぐに会話が途切れてしまう。ちょうどそのとき圭子の携帯が鳴った。あわててバッグの中から携帯を取り出そうと下を向いたとき、ちょうど歩道と車道の間にあった工事用のゴムカバーのような物につまずいてしまった。圭子はバランスを崩し勢いよくバッグを放り投げてしまった。体のバランスを失って、バッグと一緒にこのまま自分も転んでしまうと思ったとき、前にいた冨澤が振り向きざまに倒れかかった圭子をしっかりと受け止めていた。ちょうど身長が高い冨澤の胸の中に、圭子自らが両手を伸ばして抱きついたような恰好になってしまったのである。

「あ!ご、ごめんなさい!」

「い、いえ。大丈夫ですか?」

圭子はさっきの冨澤が「恥ずかしさのあまり顔を赤らめたとき以上に、おそらく何倍も顔を赤くしてしばらく顔を上げることが出来なかった。傍で見てる者には、たった何秒かの時間だったろうが圭子にはそれが何分かの時間に感じられた。そして冨澤の胸からは、とても表現のしようがない匂いがした。決して嫌な臭いではない。甘いような、酸っぱいような、なんだかとても懐かしい匂いだ。これは子供のころ近所にあったアイスクリーム工場の匂いだ。ずっと嗅いでいても苦にならない。

抱きついた瞬間からたった何秒かの間に、圭子はこんなことを一瞬で考えたのである。よく事故の瞬間にいろんなことが走馬灯のように浮かぶというでしょう。あれですよ。

そして圭子は博の胸から離れる瞬間にこうも考えたのである。

(私、この人好きかも。この人と結婚するかもしれない!)

つづく

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
九州・福岡の結婚相談所 Angel Rord
http://www.angelroad-co.com/
住所:福岡市博多区博多駅東1丁目12番5号
博多大島ビル2階
TEL:092-292-3339 FAX:092-292-3336
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑲ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・初めてお見合いに臨んだ博は、思うように会話が出来ずに見事に玉砕する。一方、圭子は婚活に疲れを感じ結婚することに疑問を持ち始めていた。》

第4章  運命の赤い糸②

「前回の特集記事はなかなかよく書けていたな。好評だったぞ。次は「趣味男の部屋~車、バイク編」でいこうと思うんだが、どうだ?」

編集会議で茂木編集長が圭子に声をかけたのは昨日のことだ。“趣味男の部屋”(シュミオ)というのは前号から始めた巻末の連載企画記事のことだ。何年か前に“大人買い”という言葉が流行ったことがある。子どもの頃に欲しかったプラモデルやおもちゃ、お金が足りなくて全部集められなかった野球カードや切手などを、大人になってからまとめてどーんと買っちゃうというあれですよ。この“大人買い”に相通じるものが“趣味男”といえるだろう。自分の好きな趣味に没頭するあまり、収入の殆どを趣味につぎ込み、休日には趣味に没頭し自分だけの世界に入り込む。簡単にいえば“オタク”ということなのだが、“オタク”がどちらかといえばアニメやフィギュアなどの秋葉系のイメージとして捉えられるのに対して、“趣味男”は鉄道模型やカメラ、プラモデルなど男ならみんなが憧れる書斎部屋で好きな物に熱中する様のことを指す。前号では鉄道模型に熱中するあまり部屋の中にジオラマまで作り、暇さえあれば機関車を走らせその姿を写真に撮るという人物の紹介だった。一口に鉄道模型といってもスケールサイズから風景、時代背景までそれぞれの種類やテーマを決めたこだわりがあるのだとか。ここ数年、バイクや車、船の模型を毎月送ってくるパーツをコツコツと作り上げていくCMがよく流れているが、これもターゲットは大人になって時間と金に余裕ができた“趣味男”を対象としたものに変わりない。

「実はな、今度は“趣味男の部屋”というよりも“趣味男のガレージ”というテーマで車やバイクなど乗り物系にハマる男たちを取材してもらおうと思っている。そうだなイメージとしては、Tジョージの世田谷ベースといったところだな。」

Tジョージというのは、よく好感度タレントに名を連ねる芸能人だ。車やバイクが好きで、自分で整備したり改造したり自宅に大きなガレージまで作っている。最近はそのガレージからTV番組を放映したり、作品の写真集まで出ているらしい。自分の好きな趣味が仕事になって金になる。同じ趣味嗜好を持つ一般人からすれば夢のような話だろう。

「ただ、これが金を持ってる有名人だと面白くない。普通の人が少しずつ自分の好きな物に手を加えていく。時間をかけながらコツコツと趣味を極めていく。そんな庶民感覚の普通の人で記事を書いてほしい。」

a1180_006141

いろいろと注文をつけながら企画をまとめたのが先日のことだ。確かに無茶なことも言うが、次々と面白い企画を当ててきた編集長の言うことだけに説得力はある。さっそく圭子は他のスタッフと一緒に人選から資料集めに奔走したのだが、編集長のいう庶民感覚の“趣味男”を探すのは至難の業だった。何人かの候補者を立てて、編集長を交え再度検討してみたが今一つ気に入らないようだった。編集長でいうところの“華がない”というやつだ。

「ガレージ編はいったん保留しよう。もう一度じっくりと練り直してからやろうじゃないか。とりあえず前回ストックしておいた飛行機のプラモデルを作っている人がいただろ?あれでいこう。」

結局、次号は取材済みの記事を載せることとなったのだが、編集長はいずれこの“趣味男のガレージ”もやりたいらしく打ち合わせの後で圭子をまたデスクに呼んだのだった。

「実はな、俺の従弟で昔からバイクが好きなやつがいるんだ。もういい歳なんだがまだ一人者でな。ちょっと人見知りする変わったやつなんだが、お前さんよかったら一度会ってみてくれないか?記事にならなければボツにしてもいい。庶民感覚だけはあるぞ。ハハハ。」

そう言って笑うと、茂木は煙草とライターを持って喫煙ルームへと向かった。

(いい歳で一人者?私のこと?)

一人者同士、冨澤博と兵頭圭子が運命の出会いをする3日前のことである。

つづく

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
九州・福岡の結婚相談所 Angel Rord
http://www.angelroad-co.com/
住所:福岡市博多区博多駅東1丁目12番5号
博多大島ビル2階
TEL:092-292-3339 FAX:092-292-3336
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑱ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・婚活Barでもっと真剣に婚活に取り組んだ方がいいと言われた圭子はもう婚活なんかやめようと決心するのだった。一方、結婚相談所で入会手続きを済ませた博は・・・。》

第4章  運命の赤い糸①

博は独身証明書なんてものがあるなんて初めて知ったのである。何でも本籍がある役場で発行してくれるらしい。博の実家は福島なので、わざわざ郵送で取り寄せたのである。そこには福島市長の印鑑が押してあって、「当市区町村保管の公簿によれば、上記の者が婚姻するに当たり、民法第732条(重婚の禁止)の規定に抵触しないことを証明する。」などと難しいことが書いてある。要は、「この人は他所で結婚してないから安心してね。」ということだ。他にも大学の卒業証明やら住民票までいろんな書類が必要らしかった。もっとも面倒な手続きはそのハッピーマリッジパートナーという結婚相談所がやってくれたのだが。

さて今日はいよいよ初めてのお見合いなんである。登録手続きが済んでから1週間もしないうちに、3名もの女性から早速、博に申し込みがあったのだ。入会の時に、博が面談した西村とかいう女は、博の年齢だと若い方は難しいという話だったが、それでも30代前半の女性が2名もいた。しかし博がYESの返事を出した女性は、もう一人の36歳の女性だった。写真だけ見ると、モデルと見間違うかのように美人タイプの女性だ。写真館で撮影されたような写真は、座っているのと立ち姿のいずれも首を少しかしげたようにポーズをつけている。博は、こんなに綺麗な人だったら結婚相談所に登録なんかしなくてもと思ったのだが、西村が言っていた別の言葉を思い出した。

「今は何年か前の婚活ブームとは違い、アラフォーになる前にしっかりと自分で考えて、若いうちから婚活に取り組む女性が増えています。」

(アラフォーになる前に・・・か。)

待ち合わせの都内の一流ホテルのロビーについたのは、約束の30分も前だった。初めてのお見合いということもあり、ハッピーマリッジパートナーからは博の担当カウンセラーの佐々木という女性が来ることになっていた。ホテルの中は尋常じゃなぐらいクーラーが効いていて、体から一気に汗が引いていくのがわかる。ロビーのソファに腰かけていた女が立ちあがり博に向かってお辞儀をした。西村から一度紹介されていたカウンセラーの佐々木だ。

「こんにちは、今日はよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

「冨澤さん、初めてのお見合いで緊張されてませんか?」

「はあ、ちょっと緊張してますね。」

「肩の力を抜いて普段通りの会話をすれば大丈夫ですよ。簡単に流れとマナーを説明しますね。」

それから佐々木は、お見合いの所用時間や飲食代の支払いについて、会話の話題、マナーなどについてレクチャーを始めた。内容は常識的な事ばかりだったが、“上手く話すことを意識するよりも、聞き上手に徹して相手の話を広げてあげるように、相槌をうまく使うことがポイントです”、という話には、なるほどと思うのだった。

「あ、お相手の女性が来られましたね。」佐々木がおもむろに立ち上がった。見ると写真で見た通りの女性がこっちに向かって歩いてきた。夏らしい白いミニのワンピースに日傘とバッグを持っている。軽く会釈をすると、佐々木が先頭に立ってホテルのティールームに連れだって歩く。ティールームの一番奥の4人掛けのソファーに座ったところで、佐々木が改めて互いを紹介した。

「こちら冨澤博さんです。大手の会社でエンジニアをなさっています。そしてこちらが、立花明美さん、同じく大手企業で秘書をなさっています。」

飲み物を注文したところで、佐々木は退席した。今日はこの後、お見合いが立て込んでいるのだとか。そういえば周りを見渡すと、ところどころにお見合いらしき男女が見える。若い男女もいれば、50代ぐらいの組み合わせもいる。一様にぎこちないというか、緊張している様子がお見合いだとすぐわかる。博は自分もお見合いをしていると思われているのかな、などと思ってしまう。

「冨澤さんのお仕事はエンジニアとお聞きしましたが、具体的にどんなお仕事をなさってらっしゃるんですか?」

「僕の仕事は主に石油精製の機械の設計をしているんです。」

「お忙しくしてらっしゃるんでしょうね。」

「え、まあ・・・・。いや最近はそうでもないかな・・。忙しいときはずっと忙しいんですけどね。はは。」

(何を言ってるんだ俺は。いかん、いかん。やっぱり緊張してるぞ。)

聞き上手になりなさいとアドバイスを受けたのはいいが、これではただ聞いてるだけではないか。しかし相手の女性が矢継ぎ早に質問をしてくるので、どうしても聞かれたことに答えるだけになってしまう。まあ、いろいろ考えなくて楽かな。見た目も美人だし申し分ないかな。ちょっとお見合い慣れしてるような感じもするけど・・・。36歳でこんなに綺麗なのに、どうして今まで結婚しなかったのだろう。こんなに綺麗な人だから当然付き合っている人もたくさんいたのだろうな、などとまたついつい余計なことばかり考えてしまう博であった。

結局、女性側がずっと質問をする形で、あっという間に1時間が経ってしまった。会話の内容も仕事のことや、女性が最近始めたという社交ダンスの趣味の話など、当たり障りのないことばかりだった。

(お見合いってこんなものなのかな・・・。)

「今日は有難うございました。」

「いえ、こちらこそ。どうぞ宜しくお願いします。」博は口ではそう答えたものの、おそらくだめだろうな、という気持ちになっていた。きっとつまらない男に思えたことだろう。会話も弾まなかったし、笑いも出なかった。初めてのお見合いだからしかたないにしても、もっと自分から積極的に話しかけたほうがよかったかもしれない。

a0002_005037

さっそくその日のうちにカウンセラーの佐々木から博の携帯に連絡があった。

「こんばんは。ハッピーマリッジの佐々木です。今日はどうもお疲れ様でした。初めてのお見合いはいかがでしたか?」

「あ、どうも。かなり緊張しちゃって考えていたこともあまり話せなかったみたいです。」

「そうでしたか。皆さん最初からそんなに上手くいく人はいませんよ。また、次に向けて頑張りましょうね!」

「次にということは、今日の方はだめだったということですか?」

「・・・・・・。残念ながら次のご縁にはつながらなかったようです。」

「・・・・・・・・。」

「でも、冨澤様ならきっとたくさんのお申込みがありますから大丈夫ですよ。最初はみなさんこんなものですよ。よければ冨澤様の方からもぜひお申込みをしてみて下さい。検索のやり方はご存じですね?ネットの弊社のホームページ画面から・・・・・・・・」

「・・・・・・・・。」(やっぱりダメだったのか・・・・。)

つづく

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
九州・福岡の結婚相談所 Angel Rord
http://www.angelroad-co.com/
住所:福岡市博多区博多駅東1丁目12番5号
博多大島ビル2階
TEL:092-292-3339 FAX:092-292-3336
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑰ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・六本木にある婚活Bar。友人の紗子に無理やり誘われて来たものの、内心ではどんな男がいるのか興味津々の圭子であった。》

 第三章 肉食女と草食男⑤

二人組の男たちは製薬会社に勤めている同僚だという。圭子が話した男性は39歳。圭子と同じように後輩に誘われて初めて来たらしい。確かに紗子が言っていたように、スペックは申し分ないのだろう。髪の毛は少し薄くなりつつあるようだが、顔も体つきもまあまあだ。着ているスーツもシャツもおしゃれな物だ。話す内容も洗練された感じがする。それなりに教養もあるのだと思う。しかしなぜか、つまらない。

(なぜ今まで結婚しなかったのだろう?)

圭子は逆にそんなことを考えた。自分のことは棚に上げて。結局、当たり障りのない話ばかりで盛り上がることもなく30分ほど経ったところで、スタッフが男性たちを呼びに来て終了となった。隣でもう一人の男性と話していた紗子も、つまらなさそうにカンパリソーダを飲んでいる。本命の約束していた男性の姿がまだ見えないからだろう。紗子が話していた製薬会社の同僚は、年もまだ30代前半ぐらいで若かったかもしれない。盗み見していたらこっちの男の方も何となくつまらなさそうにしていた。

「今日はイマイチね・・・。」

紗子がそっと耳打ちする。圭子も帰りたくなっていた。

「ねえ、いつまでいるの?何か私たちって場違いなんじゃない?」

気が付けば客の数はかなり増えている。ほぼ満杯に近い状態だ。女性の数の方が圧倒的に多いのだが、よく見ると20代ぐらいの女性ばかりのような気がする。しかもそれなりに可愛いのだ。ワンピースを着ているような女の子ばかりだ。紗子のように胸が大きく開いたサマードレスなんて着ている人はいない。圭子も今日はスカートだが、普通に白いブラウスなので仕事帰りのOLにしか見えない。

「何言ってんのよ。大丈夫よ。まだまだこれからよ!」

紗子はそう言うと、化粧直しをするつもりなのかトイレに行くと席を立った。そこへまたスタッフが一人の男性を連れて来た。必然的に、圭子が相手をするしかない。

「こんばんは、初めまして。」

現れた男は、先ほどの男性よりも年齢が上に見える。40代半ばぐらいだろうか。先ほどの製薬会社の男性よりも見た目はこっちがいい。圭子はまた先ほどと同じように、聞かれることだけに答えるようなちぐはぐな会話を始めた。圭子があまり積極的に話しかけるわけでもないので、男は一方的に自分のことを話している。聞けばバツイチの43歳なのだとか。仕事は不動産会社の役員をしているらしい。それなりに収入もあるのだろう。この男も洗練された服装に、紳士的な話し方をする。

でも何かが違う。ピンとこない。多分自分とは合わないタイプだと思う。おそらく紗子なら気に入るだろう。ルックスもいいし。そういえば紗子はトイレに行ったきりちっとも戻って来ない。

(私、いったい何やってるんだろう。こんなとこで・・・。)

合コンの時と同じだ。何か冷めて自分を客観的に見ているもう一人の私がいる。そもそも私は結婚がしたいのだろうか。婚活って何だろう。そりゃ言葉の意味は分かる。結婚活動。略して婚活。2008年にジャーナリストの白河桃子が書いた「婚活時代」という本が話題となり婚活ブームが訪れた。流行語大賞にもノミネートされ婚活をテーマにしたドラマもたくさん作られた。アラフォー、アラサ―なんて言葉も生まれた。出版社に勤めている圭子は雑誌の中で現代の婚活事情なんて特集も組んだのを覚えている。その頃、圭子は33歳。仕事が楽しくてたまらない頃だった。婚活なんてものは自分とは無縁だと思っていた。今考えてみるとおかしな話だが、いつかそれなりに自分も誰かと結婚するもんだと思っていた。例の大学のサークルの先輩の友人の山形出身の男と付き合い始めたのはそれから1年後だったはずだ。好きか嫌いかと問われれば、もちろん好きだった。でも、結婚しなかった。いやプロポーズらしき言葉も言われた。圭子は笑うだけで返事をしなかった。考えてみれば私はなんてひどい女なんだろう。せめて、きちんと答えを出してあげることが、礼儀だったのではないのか。あれからもう3年経つのか・・・・・。

a0003_000622

「あの、もしもし?」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「あのー僕の話、聞いてます?」

「?!あ、ごめんなさい!ちょっとぼーっとしちゃって。」

「・・・・・・・・・・・・。」

「すいません。友人がトイレに行ったきり戻って来ないので、気になっちゃって・・・。」

圭子は自分でもおかしな言い訳をしていると思った。男はしばらく考えると恐る恐る口を開いた。

「あのーこんな言い方をしたら失礼かもしれませんが、貴女はもう少し真剣に婚活されたほうがいいと思いますよ。お綺麗だし・・・。その気になればきっと素敵な人に巡り合えると思います。でも、あまり貴女からは結婚したいという気持ちが伝わって来ない。もしかしたら本当はお付き合いしている方がいらっしゃるのか・・・。別に好きな方がいらっしゃるのか・・・。あ、ごめんなさい、ちょっと言い過ぎました。謝ります。」

「いえ・・・。」

ちょうどスタッフが男性の交代時間を知らせに来た。男はにっこりとほほ笑んで去って行った。圭子はほぼ同時に立ち上がるとスタッフに帰ります、と告げたのであった。周りの状況を見ると、やはり女性の方が多い。しかもどう見ても圭子達よりも若い。ルックスもいい。

(そういえば、紗子はどこに・・・。)

いた。入り口に近い方の席でいつの間にかまた別の男と話している。おそらくこの男が約束をしていたという男なんだろう。テーブルを挟んでお互いに前のめりになって真剣に話している。圭子はスタッフに先に帰ると紗子に伝言を頼むと店を出た。時計を見ると21:30を回ったところだった。まだ外は蒸し暑い。クーラーが効きすぎていた店内から出たせいか、なんだか頭がクラクラする。

(貴女はもっと真剣に婚活した方がいい。・・・・か。)

圭子は2番目に話した男の言葉を思い出していた。確かに圭子は真剣に婚活などしていない。コンカツバーだってどんなもの記事ネタぐらいになればいいか、ぐらいのつもりで来ただけだ。ちょっとは興味もあったけれど。でも婚活って何だろう。結婚ってなんだろう。そもそも結婚て婚活をしてするものなんだろうか。店にいた女性たちは殆どが20代、30代だったと思う。少なくとも圭子よりは真剣に婚活に取り組んでいる女性ばかりのはずだ。

(もう婚活Barになんか来るのはよそう。お見合いパーティーも合コンも行くのはやめよう。)

自然の流れにまかせるのが一番だと思う。たとえ、結婚出来なくても心から好きだと思える人に出逢えるまでは、ジタバタしてもしょうがない。でも、もし本当に好きだな、結婚したいなって思える人に出逢えたら・・・。その時は勇気を出して自分から打ち明けよう。圭子はなぜかニコニコ急便のイケメン宅急便男子を頭に思い浮かべていた。

(?まさかね・・・。)

梅雨明けがとても早く、真夏日が連日のように続いて、学生が夏休みで浮かれている、そんなある年の夏の夜の出来事だった。

つづく

この章終わり。次回第四章、運命の赤い糸がスタートします。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
九州・福岡の結婚相談所 Angel Rord
http://www.angelroad-co.com/
住所:福岡市博多区博多駅東1丁目12番5号
博多大島ビル2階
TEL:092-292-3339 FAX:092-292-3336
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇