エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑰ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・六本木にある婚活Bar。友人の紗子に無理やり誘われて来たものの、内心ではどんな男がいるのか興味津々の圭子であった。》

 第三章 肉食女と草食男⑤

二人組の男たちは製薬会社に勤めている同僚だという。圭子が話した男性は39歳。圭子と同じように後輩に誘われて初めて来たらしい。確かに紗子が言っていたように、スペックは申し分ないのだろう。髪の毛は少し薄くなりつつあるようだが、顔も体つきもまあまあだ。着ているスーツもシャツもおしゃれな物だ。話す内容も洗練された感じがする。それなりに教養もあるのだと思う。しかしなぜか、つまらない。

(なぜ今まで結婚しなかったのだろう?)

圭子は逆にそんなことを考えた。自分のことは棚に上げて。結局、当たり障りのない話ばかりで盛り上がることもなく30分ほど経ったところで、スタッフが男性たちを呼びに来て終了となった。隣でもう一人の男性と話していた紗子も、つまらなさそうにカンパリソーダを飲んでいる。本命の約束していた男性の姿がまだ見えないからだろう。紗子が話していた製薬会社の同僚は、年もまだ30代前半ぐらいで若かったかもしれない。盗み見していたらこっちの男の方も何となくつまらなさそうにしていた。

「今日はイマイチね・・・。」

紗子がそっと耳打ちする。圭子も帰りたくなっていた。

「ねえ、いつまでいるの?何か私たちって場違いなんじゃない?」

気が付けば客の数はかなり増えている。ほぼ満杯に近い状態だ。女性の数の方が圧倒的に多いのだが、よく見ると20代ぐらいの女性ばかりのような気がする。しかもそれなりに可愛いのだ。ワンピースを着ているような女の子ばかりだ。紗子のように胸が大きく開いたサマードレスなんて着ている人はいない。圭子も今日はスカートだが、普通に白いブラウスなので仕事帰りのOLにしか見えない。

「何言ってんのよ。大丈夫よ。まだまだこれからよ!」

紗子はそう言うと、化粧直しをするつもりなのかトイレに行くと席を立った。そこへまたスタッフが一人の男性を連れて来た。必然的に、圭子が相手をするしかない。

「こんばんは、初めまして。」

現れた男は、先ほどの男性よりも年齢が上に見える。40代半ばぐらいだろうか。先ほどの製薬会社の男性よりも見た目はこっちがいい。圭子はまた先ほどと同じように、聞かれることだけに答えるようなちぐはぐな会話を始めた。圭子があまり積極的に話しかけるわけでもないので、男は一方的に自分のことを話している。聞けばバツイチの43歳なのだとか。仕事は不動産会社の役員をしているらしい。それなりに収入もあるのだろう。この男も洗練された服装に、紳士的な話し方をする。

でも何かが違う。ピンとこない。多分自分とは合わないタイプだと思う。おそらく紗子なら気に入るだろう。ルックスもいいし。そういえば紗子はトイレに行ったきりちっとも戻って来ない。

(私、いったい何やってるんだろう。こんなとこで・・・。)

合コンの時と同じだ。何か冷めて自分を客観的に見ているもう一人の私がいる。そもそも私は結婚がしたいのだろうか。婚活って何だろう。そりゃ言葉の意味は分かる。結婚活動。略して婚活。2008年にジャーナリストの白河桃子が書いた「婚活時代」という本が話題となり婚活ブームが訪れた。流行語大賞にもノミネートされ婚活をテーマにしたドラマもたくさん作られた。アラフォー、アラサ―なんて言葉も生まれた。出版社に勤めている圭子は雑誌の中で現代の婚活事情なんて特集も組んだのを覚えている。その頃、圭子は33歳。仕事が楽しくてたまらない頃だった。婚活なんてものは自分とは無縁だと思っていた。今考えてみるとおかしな話だが、いつかそれなりに自分も誰かと結婚するもんだと思っていた。例の大学のサークルの先輩の友人の山形出身の男と付き合い始めたのはそれから1年後だったはずだ。好きか嫌いかと問われれば、もちろん好きだった。でも、結婚しなかった。いやプロポーズらしき言葉も言われた。圭子は笑うだけで返事をしなかった。考えてみれば私はなんてひどい女なんだろう。せめて、きちんと答えを出してあげることが、礼儀だったのではないのか。あれからもう3年経つのか・・・・・。

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「あの、もしもし?」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「あのー僕の話、聞いてます?」

「?!あ、ごめんなさい!ちょっとぼーっとしちゃって。」

「・・・・・・・・・・・・。」

「すいません。友人がトイレに行ったきり戻って来ないので、気になっちゃって・・・。」

圭子は自分でもおかしな言い訳をしていると思った。男はしばらく考えると恐る恐る口を開いた。

「あのーこんな言い方をしたら失礼かもしれませんが、貴女はもう少し真剣に婚活されたほうがいいと思いますよ。お綺麗だし・・・。その気になればきっと素敵な人に巡り合えると思います。でも、あまり貴女からは結婚したいという気持ちが伝わって来ない。もしかしたら本当はお付き合いしている方がいらっしゃるのか・・・。別に好きな方がいらっしゃるのか・・・。あ、ごめんなさい、ちょっと言い過ぎました。謝ります。」

「いえ・・・。」

ちょうどスタッフが男性の交代時間を知らせに来た。男はにっこりとほほ笑んで去って行った。圭子はほぼ同時に立ち上がるとスタッフに帰ります、と告げたのであった。周りの状況を見ると、やはり女性の方が多い。しかもどう見ても圭子達よりも若い。ルックスもいい。

(そういえば、紗子はどこに・・・。)

いた。入り口に近い方の席でいつの間にかまた別の男と話している。おそらくこの男が約束をしていたという男なんだろう。テーブルを挟んでお互いに前のめりになって真剣に話している。圭子はスタッフに先に帰ると紗子に伝言を頼むと店を出た。時計を見ると21:30を回ったところだった。まだ外は蒸し暑い。クーラーが効きすぎていた店内から出たせいか、なんだか頭がクラクラする。

(貴女はもっと真剣に婚活した方がいい。・・・・か。)

圭子は2番目に話した男の言葉を思い出していた。確かに圭子は真剣に婚活などしていない。コンカツバーだってどんなもの記事ネタぐらいになればいいか、ぐらいのつもりで来ただけだ。ちょっとは興味もあったけれど。でも婚活って何だろう。結婚ってなんだろう。そもそも結婚て婚活をしてするものなんだろうか。店にいた女性たちは殆どが20代、30代だったと思う。少なくとも圭子よりは真剣に婚活に取り組んでいる女性ばかりのはずだ。

(もう婚活Barになんか来るのはよそう。お見合いパーティーも合コンも行くのはやめよう。)

自然の流れにまかせるのが一番だと思う。たとえ、結婚出来なくても心から好きだと思える人に出逢えるまでは、ジタバタしてもしょうがない。でも、もし本当に好きだな、結婚したいなって思える人に出逢えたら・・・。その時は勇気を出して自分から打ち明けよう。圭子はなぜかニコニコ急便のイケメン宅急便男子を頭に思い浮かべていた。

(?まさかね・・・。)

梅雨明けがとても早く、真夏日が連日のように続いて、学生が夏休みで浮かれている、そんなある年の夏の夜の出来事だった。

つづく

この章終わり。次回第四章、運命の赤い糸がスタートします。

 

 

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