エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑱ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・婚活Barでもっと真剣に婚活に取り組んだ方がいいと言われた圭子はもう婚活なんかやめようと決心するのだった。一方、結婚相談所で入会手続きを済ませた博は・・・。》

第4章  運命の赤い糸①

博は独身証明書なんてものがあるなんて初めて知ったのである。何でも本籍がある役場で発行してくれるらしい。博の実家は福島なので、わざわざ郵送で取り寄せたのである。そこには福島市長の印鑑が押してあって、「当市区町村保管の公簿によれば、上記の者が婚姻するに当たり、民法第732条(重婚の禁止)の規定に抵触しないことを証明する。」などと難しいことが書いてある。要は、「この人は他所で結婚してないから安心してね。」ということだ。他にも大学の卒業証明やら住民票までいろんな書類が必要らしかった。もっとも面倒な手続きはそのハッピーマリッジパートナーという結婚相談所がやってくれたのだが。

さて今日はいよいよ初めてのお見合いなんである。登録手続きが済んでから1週間もしないうちに、3名もの女性から早速、博に申し込みがあったのだ。入会の時に、博が面談した西村とかいう女は、博の年齢だと若い方は難しいという話だったが、それでも30代前半の女性が2名もいた。しかし博がYESの返事を出した女性は、もう一人の36歳の女性だった。写真だけ見ると、モデルと見間違うかのように美人タイプの女性だ。写真館で撮影されたような写真は、座っているのと立ち姿のいずれも首を少しかしげたようにポーズをつけている。博は、こんなに綺麗な人だったら結婚相談所に登録なんかしなくてもと思ったのだが、西村が言っていた別の言葉を思い出した。

「今は何年か前の婚活ブームとは違い、アラフォーになる前にしっかりと自分で考えて、若いうちから婚活に取り組む女性が増えています。」

(アラフォーになる前に・・・か。)

待ち合わせの都内の一流ホテルのロビーについたのは、約束の30分も前だった。初めてのお見合いということもあり、ハッピーマリッジパートナーからは博の担当カウンセラーの佐々木という女性が来ることになっていた。ホテルの中は尋常じゃなぐらいクーラーが効いていて、体から一気に汗が引いていくのがわかる。ロビーのソファに腰かけていた女が立ちあがり博に向かってお辞儀をした。西村から一度紹介されていたカウンセラーの佐々木だ。

「こんにちは、今日はよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

「冨澤さん、初めてのお見合いで緊張されてませんか?」

「はあ、ちょっと緊張してますね。」

「肩の力を抜いて普段通りの会話をすれば大丈夫ですよ。簡単に流れとマナーを説明しますね。」

それから佐々木は、お見合いの所用時間や飲食代の支払いについて、会話の話題、マナーなどについてレクチャーを始めた。内容は常識的な事ばかりだったが、“上手く話すことを意識するよりも、聞き上手に徹して相手の話を広げてあげるように、相槌をうまく使うことがポイントです”、という話には、なるほどと思うのだった。

「あ、お相手の女性が来られましたね。」佐々木がおもむろに立ち上がった。見ると写真で見た通りの女性がこっちに向かって歩いてきた。夏らしい白いミニのワンピースに日傘とバッグを持っている。軽く会釈をすると、佐々木が先頭に立ってホテルのティールームに連れだって歩く。ティールームの一番奥の4人掛けのソファーに座ったところで、佐々木が改めて互いを紹介した。

「こちら冨澤博さんです。大手の会社でエンジニアをなさっています。そしてこちらが、立花明美さん、同じく大手企業で秘書をなさっています。」

飲み物を注文したところで、佐々木は退席した。今日はこの後、お見合いが立て込んでいるのだとか。そういえば周りを見渡すと、ところどころにお見合いらしき男女が見える。若い男女もいれば、50代ぐらいの組み合わせもいる。一様にぎこちないというか、緊張している様子がお見合いだとすぐわかる。博は自分もお見合いをしていると思われているのかな、などと思ってしまう。

「冨澤さんのお仕事はエンジニアとお聞きしましたが、具体的にどんなお仕事をなさってらっしゃるんですか?」

「僕の仕事は主に石油精製の機械の設計をしているんです。」

「お忙しくしてらっしゃるんでしょうね。」

「え、まあ・・・・。いや最近はそうでもないかな・・。忙しいときはずっと忙しいんですけどね。はは。」

(何を言ってるんだ俺は。いかん、いかん。やっぱり緊張してるぞ。)

聞き上手になりなさいとアドバイスを受けたのはいいが、これではただ聞いてるだけではないか。しかし相手の女性が矢継ぎ早に質問をしてくるので、どうしても聞かれたことに答えるだけになってしまう。まあ、いろいろ考えなくて楽かな。見た目も美人だし申し分ないかな。ちょっとお見合い慣れしてるような感じもするけど・・・。36歳でこんなに綺麗なのに、どうして今まで結婚しなかったのだろう。こんなに綺麗な人だから当然付き合っている人もたくさんいたのだろうな、などとまたついつい余計なことばかり考えてしまう博であった。

結局、女性側がずっと質問をする形で、あっという間に1時間が経ってしまった。会話の内容も仕事のことや、女性が最近始めたという社交ダンスの趣味の話など、当たり障りのないことばかりだった。

(お見合いってこんなものなのかな・・・。)

「今日は有難うございました。」

「いえ、こちらこそ。どうぞ宜しくお願いします。」博は口ではそう答えたものの、おそらくだめだろうな、という気持ちになっていた。きっとつまらない男に思えたことだろう。会話も弾まなかったし、笑いも出なかった。初めてのお見合いだからしかたないにしても、もっと自分から積極的に話しかけたほうがよかったかもしれない。

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さっそくその日のうちにカウンセラーの佐々木から博の携帯に連絡があった。

「こんばんは。ハッピーマリッジの佐々木です。今日はどうもお疲れ様でした。初めてのお見合いはいかがでしたか?」

「あ、どうも。かなり緊張しちゃって考えていたこともあまり話せなかったみたいです。」

「そうでしたか。皆さん最初からそんなに上手くいく人はいませんよ。また、次に向けて頑張りましょうね!」

「次にということは、今日の方はだめだったということですか?」

「・・・・・・。残念ながら次のご縁にはつながらなかったようです。」

「・・・・・・・・。」

「でも、冨澤様ならきっとたくさんのお申込みがありますから大丈夫ですよ。最初はみなさんこんなものですよ。よければ冨澤様の方からもぜひお申込みをしてみて下さい。検索のやり方はご存じですね?ネットの弊社のホームページ画面から・・・・・・・・」

「・・・・・・・・。」(やっぱりダメだったのか・・・・。)

つづく

 

 

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