エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑲ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・初めてお見合いに臨んだ博は、思うように会話が出来ずに見事に玉砕する。一方、圭子は婚活に疲れを感じ結婚することに疑問を持ち始めていた。》

第4章  運命の赤い糸②

「前回の特集記事はなかなかよく書けていたな。好評だったぞ。次は「趣味男の部屋~車、バイク編」でいこうと思うんだが、どうだ?」

編集会議で茂木編集長が圭子に声をかけたのは昨日のことだ。“趣味男の部屋”(シュミオ)というのは前号から始めた巻末の連載企画記事のことだ。何年か前に“大人買い”という言葉が流行ったことがある。子どもの頃に欲しかったプラモデルやおもちゃ、お金が足りなくて全部集められなかった野球カードや切手などを、大人になってからまとめてどーんと買っちゃうというあれですよ。この“大人買い”に相通じるものが“趣味男”といえるだろう。自分の好きな趣味に没頭するあまり、収入の殆どを趣味につぎ込み、休日には趣味に没頭し自分だけの世界に入り込む。簡単にいえば“オタク”ということなのだが、“オタク”がどちらかといえばアニメやフィギュアなどの秋葉系のイメージとして捉えられるのに対して、“趣味男”は鉄道模型やカメラ、プラモデルなど男ならみんなが憧れる書斎部屋で好きな物に熱中する様のことを指す。前号では鉄道模型に熱中するあまり部屋の中にジオラマまで作り、暇さえあれば機関車を走らせその姿を写真に撮るという人物の紹介だった。一口に鉄道模型といってもスケールサイズから風景、時代背景までそれぞれの種類やテーマを決めたこだわりがあるのだとか。ここ数年、バイクや車、船の模型を毎月送ってくるパーツをコツコツと作り上げていくCMがよく流れているが、これもターゲットは大人になって時間と金に余裕ができた“趣味男”を対象としたものに変わりない。

「実はな、今度は“趣味男の部屋”というよりも“趣味男のガレージ”というテーマで車やバイクなど乗り物系にハマる男たちを取材してもらおうと思っている。そうだなイメージとしては、Tジョージの世田谷ベースといったところだな。」

Tジョージというのは、よく好感度タレントに名を連ねる芸能人だ。車やバイクが好きで、自分で整備したり改造したり自宅に大きなガレージまで作っている。最近はそのガレージからTV番組を放映したり、作品の写真集まで出ているらしい。自分の好きな趣味が仕事になって金になる。同じ趣味嗜好を持つ一般人からすれば夢のような話だろう。

「ただ、これが金を持ってる有名人だと面白くない。普通の人が少しずつ自分の好きな物に手を加えていく。時間をかけながらコツコツと趣味を極めていく。そんな庶民感覚の普通の人で記事を書いてほしい。」

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いろいろと注文をつけながら企画をまとめたのが先日のことだ。確かに無茶なことも言うが、次々と面白い企画を当ててきた編集長の言うことだけに説得力はある。さっそく圭子は他のスタッフと一緒に人選から資料集めに奔走したのだが、編集長のいう庶民感覚の“趣味男”を探すのは至難の業だった。何人かの候補者を立てて、編集長を交え再度検討してみたが今一つ気に入らないようだった。編集長でいうところの“華がない”というやつだ。

「ガレージ編はいったん保留しよう。もう一度じっくりと練り直してからやろうじゃないか。とりあえず前回ストックしておいた飛行機のプラモデルを作っている人がいただろ?あれでいこう。」

結局、次号は取材済みの記事を載せることとなったのだが、編集長はいずれこの“趣味男のガレージ”もやりたいらしく打ち合わせの後で圭子をまたデスクに呼んだのだった。

「実はな、俺の従弟で昔からバイクが好きなやつがいるんだ。もういい歳なんだがまだ一人者でな。ちょっと人見知りする変わったやつなんだが、お前さんよかったら一度会ってみてくれないか?記事にならなければボツにしてもいい。庶民感覚だけはあるぞ。ハハハ。」

そう言って笑うと、茂木は煙草とライターを持って喫煙ルームへと向かった。

(いい歳で一人者?私のこと?)

一人者同士、冨澤博と兵頭圭子が運命の出会いをする3日前のことである。

つづく

 

 

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