エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説21 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・取材で冨澤を尋ねた圭子は、道で転んでしまい冨澤の胸に抱きすくめられる。冨澤に懐かしい匂いを感じた圭子は・・・》

第4章  運命の赤い糸④

「本当に大丈夫ですか?」

「だ、だいじょうぶよ。ありがとう」

圭子は慌てて放り投げたバッグを拾いに走る。先に散らばった中身を拾い集めてくれていたカメラマンの水田も声をかけた。

幸い携帯も壊れていないようだ。着信を調べてみると茂木編集長だ。

(まったく間の悪い・・・。後でかけ直そう)

冨澤のマンションは歩いてすぐの場所にあった。圭子は恥ずかしさを隠すために、水田に後から行くと伝えマンションのエントランスに残り電話をかけることにした。

まだ顔に冨澤の匂いが残っている。手にも冨澤の胸の感触がある。痩せているのに胸板は厚かった。人見知りでボソボソとしか話さず、とても女性の扱いに慣れているとは思えそうもないのに、受け止めてくれた腕はしっかりと圭子の肩を掴んでいた。その力強い手はとても不器用な感じがして優しかった。

(あ!もしかしてTシャツに口紅が付いたんじゃ!)冨澤の真っ白いTシャツを思い出してまた恥ずかしくなった。

「もしもし、兵頭です。すいません、電話出れなくて」

「おう。どうだ?順調か?ちょっと変わったやつだから、注意しろよ」

「そんなことより、編集長また話が伝わってませんよ!顔は出さないでくれって言ってます」

「心配すんな。後でまた上手く話しておくから。そっちが終わったらでいいから勝木先生に連絡取ってくれ。」

そういえばしばらく勝木からの連絡がなかった。なんだか久しぶりに勝木の声も聴きたくなった。勝木なら今の圭子の心境の変化も見破ることが出来るだろうか。勝木のいたずら小僧のような眼が頭に浮かぶ。

圭子は冨澤に教えられた号室をインターホンで押しドアを開けてもらった。部屋に入る前にもう一度、呼吸を整え身づくろいをする。部屋に入るとカメラマンの水田が機材を準備しているのが見えた。冨澤というとキッチンの方でお茶の準備でもしているようだ。

「兵頭さん、先に冨澤さんから話を聞きますか?」

「あ、そうね。いや、先にバイクを整備している写真からにしましょう」

いきなり面と向かって話を聞くのはまだ照れくさい。さっきのことがあってから、冨澤の顔を見るのがなんとなく眩しい。しばらく水田に任せて時間を引き延ばそう。

そこへアイスコーヒーを入れたトレイを持って冨澤が現れた。改めて部屋を見てみると、男一人の部屋にしてはとても綺麗に片付いている。リビングも広く大型テレビの前にあるガラステーブルにも何もなくすっきりとしている。圭子の住んでいるマンションよりもかなり広い。これでバイクの専用ガレージまで地下にあるらしいから、家賃も相当するのだろう。こんなに広い部屋で一人で寂しくないのだろうか。これだけいい暮らしをしていて、おまけにそこそこの美男子なのにどうして結婚しないのだろう。

(女嫌いなのかな。もしかしてあっち?)ついつい余計なことばかり考えてしまう圭子だった。

「あの~、まず何をしたらいいですか?」冨澤の声で我に返る。

「先に、バイクの写真とバイクを整備している写真から撮らせてもらえますか?」

冨澤の案内で地下にある専用ガレージへと向かった。それぞれの車庫にシャッターまでついており、とても立派なものだ。車よりバイクの方が便利な都会では、バイクの車庫付きのマンションも最近は増えているらしい。

「わ!かっこいい!ファットボーイですね?」バイクを見るなり水田が駆け寄る。

「バイク乗るんですか?」冨澤も嬉しそうに答えた。

「僕はスポーツタイプばっかりです。いつかはハーレーに乗りたいんですけどね。まだハーレーが似合う年じゃないから・・・」

「いいですよ。ハーレーは。この音がたまらない。僕はずっと若いときからハーレーですけどね」

「冨澤さんはカッコイイからハーレー似合ってますよ。僕も早くハーレーが似合う渋い中年になりたいです」

「・・・・・・・・・・」

(それって俺は中年ってことかよ!)

「じゃあ、冨澤さん、まずはバイクの横に立って下さい。何枚か撮りますんで・・・」

それから二人はバイクの話を交えながら、リラックスしたムードで写真を撮り始めていた。圭子は少し離れたところから改めて博を見た。やっぱり俳優のY.Tにそっくりだ。缶コーヒーのCMに出ていて、最近はユーモラスな一面ものぞかせている。そういえばこの顔はニコニコ急便の宅配便のお兄さんにもなんとなく似ている。

(私ってこういう顔が好きなのかな・・・)

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「あ!水田君、ストップ!ちょっといったん止めて!」

「はい!どうしました?」

圭子は静かに博に立ち寄り小さな声で話しかけた。

「あの、すみません。Tシャツに口紅つけちゃったみたいです。ごめんなさい」

「?・・・え!あ、ほんとだ」

「後でクリーニング出しますから、預からせて下さい」

「いや、そんな!大丈夫ですよ。後で洗えばいいだけですから・・・」

「そうじゃなくて・・・。あの~写真に写り込んでしまうので・・・」

今度は同時に赤くなる圭子と博であった。その頬の赤味はちょうどTシャツに付いた口紅の色と同じような色をしていた。

つづく

 

 

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