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エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑯ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・アラフォー女(死語になりかけ)の圭子はついに友人の紗子に誘われコンカツバーに行くことになったのだが・・・。》

 第三章 肉食女と草食男④

その来週の金曜日は意外に早くやってきた・・・ような気がする。圭子はいつものように「行けそうだったら行くわ。」ぐらいの軽い返事ですませていたのだが、そんなときに限って仕事も案外早く終わったりする。あれから作家の勝木も何も連絡してこない。とっくにタイから帰って来ているはずなのに。次の原稿も郵送で送ってきているので、特にこっちから連絡するようなこともないのだが。圭子は久しぶりに勝木のくだらない冗談でも聞いてみたい気分だったのだが、電話はかかってこなかった。結局、六本木の交差点で待ってるからという紗子の半ば強引な誘いを断れずに地下鉄に乗ったのである。

(またこの前みたいな変な男ばかりだったら帰ればいいんだから・・・。)

圭子は自分に言い聞かせながらも、紗子の電話口の興奮したような声を思い出していた。

「今度こそ間違いないわ!けっこうレベルが高い男が来てたのよ!私、その人とまた会うって約束しちゃった!」

約束の19:00には六本木の交差点に着いたのだが、紗子の姿がどこにも見えない。夏休みに入った金曜日の夜は、学生風の若者がたくさんたむろしていた。夜になってもまだ暑い。昼間、太陽の熱をたっぷりと蓄えたアスファルトが夜になるとじんわりと放出しているかのようだ。圭子は額の汗をハンカチで拭いながら携帯電話をバッグから取り出そうとした時に背後から声がした。

「お待たせ!ごめ~ん!遅くなっちゃった。」

見るとタクシーの中から大きな声で呼ぶ紗子がいた。

「ごめん、美容室が時間かかっちゃって・・・。」

息を弾ませながら紗子がやって来た。また、今日は一段と気合が入っている。胸の大きく開いたサマードレス。ヘアースタイルはカールで大きく盛り上げている。

(レッドカーペットでも歩くつもり?!)

「行きましょ!場所はすぐそこ。」

「また、今日は一段とすごい恰好してるわね?」

「当たり前じゃない!今日は勝負かけるわよ。」

紗子は仕事柄、洋服もたくさん持っているし、メイク、美容にもお金を惜しまない。元々、土台が綺麗な方だとは思う、が、やり過ぎて失敗しているような気がする。もっとナチュラルでいいのに、と圭子は思うのだ。

『シングルズ・バー パープル 六本木』と書かれた看板があるビルの5Fにその店はあった。会員制というプレートが扉に貼ってある。店の中は照明がほの暗く、細長い作りになっている。カウンター席にテーブル席、ソファー席もある。圭子達が店に入ったときは、まだ客もまばらで女性が何人かいるだけだった。紗子は一度来ているので、入会登録は済んでいるらしく圭子だけソファ席に通され会員登録に必要な書類を渡された。会員制ということは、客になるにはまず会員登録をしなければならないらしい。圭子は、大体の話は紗子から聞いていたので、そんなに変な店ではないだろうとは予想はしていたのだが、個人情報まで記載して入会することが何となく面倒な気分になっていた。書類には注意事項として「独身者であること」「彼女、彼氏がいる方はご遠慮下さい」と書いてある。彼氏、彼女がいたって独身なんだから参加してもいいんじゃないかと圭子は思うのだった。一通り手続きが済んだところで、紗子がいるテーブル席へ案内された。

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いつもなら既に酒をガブガブ飲んでるはずなのに、今日はカンパリソーダのようなものを口もつけずにおとなしくしている。

「ねえ、ちょっと。ここの飲み物とかの支払はどうなってるの?」

「大丈夫よ。女性は全部タダよ。男性が払ってくれるシステムなんだって。2回目からは女性もテーブルチャージがかかるらしいけど。」

「ちょっと紗子、いきなり私1対1で話したりするのはいやだわ。最初はあなたも一緒にいてよ。」

「大丈夫よ~。そんな変な男はいないわよ。けっこう紳士が多かったわよ。」

そう言われてみれば、いつの間にか男性客がいる。30代から40代ぐらいの会社帰りのサラリーマン風の男がかしこまって座っているのがちらほらと見える。

「私、今日はこの前の人と、この後どこか行くかもしれないから帰りは別々でね。」

「いいけど、その人はいつ来るのよ。」

「わからないわ。8時ぐらいだと思うけど。」

その時、店のスタッフが紗子たちがいるテーブルに近づいて来て声をかけた。

「お二人組で来られている男性がいらっしゃいますが、よかったら奥のテーブルで4人でお話しされませんか?」

紗子は少し考えていたが、前に約束していた男もまだ来ないし、圭子にも早く雰囲気に慣れさせようと思ったのだろう、圭子の手を引っ張って奥へと移動した。

「こんばんは!」

「こんばんは!」

スーツ姿の男性二人がほぼ同時に立ち上がった。

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑮ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・・兵頭圭子38歳。出版社勤務のキャリアウーマン(死語)友人の紗子に触発されて婚活に少しずつ興味を持ち始めたのだが・・・。》

 肉食女と草食男③

「しっかりご飯は食べてるのかい?ちゃんと野菜も食べなきゃだめよ。」

「分かってるわよ。でも一人なんだからそんなに食べれないのよ。」

「ところで、あんたお盆は帰って来るんだろう?」

「分からないわ。何もなければ帰るつもりだけど。」

相変わらず母はこまごまとうるさい。一人娘の圭子がまだ結婚もせず都会でいつまでも独り暮らしをしているのが心配でたまらないのだろう。母に比べて父は大雑把な性格であまり細かいことは言わない。圭子は父に似たのだろうと思う。酒が強いのは母方の方に似たのだが。

「また、見てもらいたい物があるんだけど・・・。」

「何よ?またお見合い写真じゃないでしょうね?」

「今度は学校の先生らしいのよ。とっても真面目な方なんだって。」

「また?!どうせまた美津子伯母さんが持ってきた話でしょ?もう断っといて。」

美津子伯母さんというのは父の姉で、よく実家に来ては圭子に縁談の話を持ってくる。お茶に生け花、書道に琴とたくさんの免状を持ち、お弟子さんをたくさん抱え、70歳を超えた今でも元気に教室を開いているそうだ。地元の名士や市会議員等にも顔が広く、ボランティアで仲人のようなことをやっているらしい。今ではまとめた縁談も100組を超え、“町の世話焼きおばさん”として市から表彰までされているのだとか。

何度か圭子も写真だけは見たことがあるのだが、どれもこれも印象の薄いパッとしない人ばかりだった。

「せっかく美津子義姉さんが心配して持って来てくれてるのに、悪いじゃないの。」

「だって、お見合いなんかする気ないもん。まだ仕事続けたいし。」

「とにかく帰ってきたら写真だけは見なさいよ。」

「はいはい。帰れたらね。」

適当なところで電話を切らないといつまでたっても、冷たいビールが飲めない。圭子は半ば強引に電話を切ると、冷蔵庫からビールを取り出し、プルトップを引くなりそのまま口に流し込んだ。

「かあ~!うまいっ!」

カラカラに乾いた喉に冷たく冷えたビールが染み渡る。誰もいないから、こういうオヤジみたいなことも出来ちゃうのだ。

(結婚したら下着のまんま、ビールなんか飲めないだろうな・・・。)

「はあ~。」

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圭子は深くため息をつくとトマトスライスを“作り”にキッチンへ立った。この場合“作る”とは言わないのだけれど。基本的に料理を作ったりするのが苦手なのだ。大体、一人暮らしの場合にはご飯を炊いたり、おかずを作ったりしても絶対に食べきれない。結局、捨てるかラップに包んで冷凍庫に入れてしまう。今回、玉ねぎとじゃがいもまで送って来てるのを見て、またカレー作らなきゃなどと考える圭子だった。まだ、前のカレーが2パックも残っているというのに。

(カレーを冷凍保存するときは、じゃがいもは入れちゃだめね。スカスカしておいしくなくなるから。)

そんな余計な知識だけは一人前なのだけど。

シャワーも浴びて、テーブルにはトマトスライス、モロキュー、チーズにサラミとおつまみ系ばかり並べて、3本目のビールをグラスに注ごうとした時に今度は圭子の携帯が鳴った。

「あ、私。紗子よ。もう帰ってた?例のコンカツバーに行ってきたわよ!今度一緒に行きましょ!」

「え~!」

「絶対に今度は間違いないわよ!それが、けっこういい男が来てたのよ。」

「どんな人なの?」

「そうねえ、30代と40代がほとんどかな。けっこうみんなそれなりにレベルの高い人が来てたわよ。」

「ふーん。」

「とにかく来週の金曜日空けといて!私も今日知り合った人とまた会う約束しちゃった!」

「え~!!!」

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑭ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・・・コンカツ女の紗子から合コンで知り合った従業員、美由紀の友人の亜紀と、アキバ系オタクの遠藤が付き合っていると聞いて驚く。》

 肉食女と草食男②

「ね?びっくりでしょ?」

「なんかそういえば話が弾んでたわよね。」

「そうそう!合コンの後、二人ともいなくなってたから、おかしいなと思ったんだけど・・・。どこに行ってたと思う?」

「?!え、何よ。まさか・・・?」

「違うわよ!圭子が考えてるようなとこじゃないわ。ホテルと思ったでしょ?ふふ。」

「・・・・・・・・。」

(そりゃ、あんたが考えてるんでしょ!)

「なんと、二人でネットカフェに行ってペアブースでずっと漫画読んでたんだって!ハハ、笑っちゃうでしょう?」

圭子は紗子と店の前で別れて、今日行われる対談記事を取材するために都内のあるホテルに向かった。7月に入ってすぐに梅雨が明けた。今年は昨年より1週間ほど早かったらしい。午後3時をまわった頃だが照りつける日差しが、じりじりと刺すように痛い。圭子は紗子から最後に聞いた言葉を思い出していた。

「今は女も男もあんなタイプが意外にモテるのかしら。あーあ。もう誰でもいいから結婚したいわあ!ねえ、今度、コンカツバーっていうところに行ってみない?」

 

紗子が言っていた、あんな女と男のことだが、合コン初参加の亜紀は28歳、全く化粧っ気がなく地味なタイプ。よく見ると長いまつげと大きな目をした可愛い顔をしていた。読書が好きで図書館で働いている。紗子や美由紀とは正反対の女。一方、男は遠藤良一、35歳、見るからに冴えないアキバ系。趣味はゲームにアニメ、鉄道と典型的なオタクである。圭子は亜紀と遠藤が目を輝かせながら夢中になって話していたのを覚えている。紗子のように男経験も豊富でそこそこ色気もある女が、婚活してもちっともうまくいかないのに対し、亜紀や遠藤のように恋愛には疎い人間でもたった一度の出会いでお付き合いが始まることもあるのだ。紗子のように露骨に結婚!結婚!と結婚願望があるわけではないが、亜紀と遠藤のような同じ価値観を分かち合える恋人がいたら楽しいのだろうなあと、何となく羨ましくなった。

 

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(コンカツバーか・・・。一度だけ紗子に付き合って行ってみようか・・・。)

圭子はそんなことをぼんやり考えながら、地下鉄の駅に続く階段を下りていった。

対談の仕事が予定よりも早く終わり、圭子はいったん会社に戻って雑務をこなしそのまま家に帰ることにした。久しぶりに早くマンションに帰って、冷たいビールでも飲みながら対談記事をまとめようと考えたのである。圭子が住んでいるマンションは東京でもまだ下町の雰囲気を残す川べりに建っている。休日にはよく近所を散歩するのだが、小さな古本屋、昔懐かしい雑貨屋、老舗の蕎麦屋などを覗いては一日ブラブラと時間を過ごしている。マンションに着いてポストを開けると、チラシや何通かのDMに交じって宅配便の不在票があるのに気付いた。

(また家から何か送ってきたんだわ。この前トマト送ってきてたばかりなのに・・・。)

圭子の実家は神奈川で、両親も健在だ。長年、教師をしていた父親は数年前に地元の小学校の校長を最後に今は家でのんびりと暮らしている。リタイアと同時にこれまた同じく元教師の母と家庭菜園を始めたのだが、いつも作りすぎては近所に配ったり、圭子のところへ送ってくるのだ。圭子も不規則な仕事をしている為、家で食べる事も少なくいつも冷蔵庫の中で残してしまい、最後は結局捨てることになるのだが・・・。

圭子は酒のつまみを作ろうと思いキッチンに立ったときにインターホンが鳴った。

「こんばんは~!宅急便です!」

モニター画面を見るとよく見かける青いポロシャツを着た宅配業者の青年が荷物を持って立っていた。

「あ、は~い。」

「こんばんは。ニコニコ急便です。兵頭さん、お荷物が届いています。」

やっぱり実家からだ。いつもこのニコニコ急便で送ってくる。配達に来るこのお兄さんもいつもの人だ。もう夜の8時を回っているが、けっこう遅くまで配達をしているようだ。部屋のチャイムが鳴ったので、圭子はドアを開けた。

「こんばんは!ニコニコ急便です。兵頭様からのお荷物をお届けします!ここにサインをお願いします!」

ニコニコ急便の男は日焼けした顔に汗をにじませながら、伝票とボールペンを差し出した。名札を見ると「秦」と書いてある。逞しい体つきをしている。少し汗のにおいがするポロシャツがぴっちりと張り付いていた。年の頃は32、33ぐらいか。圭子は実はこの宅急便のお兄さんが気に入っていた。いつ見ても明るく元気な挨拶で気持ちがいい。少し頬がこけていて、目が大きいところがある俳優に似ている。そういえば最近は宅急便男子なるものが流行っているらしい。「佐川男子」とかいう写真集のような物まで出ているのだとか。彼らの親切な対応や重い荷物も軽々と運ぶ頼もしさに惹かれる女性が多く売れ行きは好調。「おうちに来てくれる身近な王子さま」として、彼らの魅力を存分に紹介した内容になっており、重版も見込まれていると同じ出版業界で働く圭子は聞いたことがある。また、ネットでは「宅急便男子を落とす恋のテクニック」とかいう講座まであるらしい。

「ご苦労様でした!」

圭子はそれだけ言うと荷物を受け取った。いつものようにあっという間の時間である。そこで何か次の展開があるなんてことにはならないのだ。ドラマじゃあるまいし。ましてや、どう見ても自分よりもはるかに年下のこのイケメンがアラフォー女を相手にするわけがないのだ。圭子は、たまにやって来るイケメンの宅急便男子を見ているだけで十分なのだ。婚活をしようと思っても、心から本気で結婚したいのか?と問われればまだ自分でもよく分からない。段ボールを開けてみるとびっしりと野菜が入っている。トマト、きゅうり、玉ねぎ、じゃがいも。横には、水ようかんやゼリーの詰め合わせまで入っている。おそらくもらい物だろう。

(また、こんなにたくさん送ってきて・・・・。前のトマトもまだ冷蔵庫にあるのに・・・。)

圭子はうんざりしながらも、荷物が届いたことを実家に伝えるために電話のハンディホンを手にした。一応、そういうとこは律儀なのだ。教育者の両親の間に育った圭子は真面目なのだ。宅急便男子を自分から口説いたりしないのだ。

「もしもし、お母さん?圭子。宅急便、届いたわよ。ありがとう!もう、しばらく何も送らなくていいからね!」

感謝しつつも薄情な圭子であった。

(とりあえずまだ冷蔵庫に残っているトマトから先に食べなきゃ!)切って皿に盛ってマヨネーズをかけるだけのことだが。

「もしもし、圭子、ちょっと待ちなさい!」

(きゅうりもお味噌つけてモロキューにして食べよっと!)

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑬ 作 エンジェルおじさん

第三章 肉食女と草食男

《前回までのあらすじ・・・・・・兵頭圭子に冨澤博。くしくも同じ時期に婚活を始めた二人だが、二人が出会うのはまだ先の話。今日もまたコンカツ女の紗子がやって来て・・・。》

「もしもし~、元気?この前はごめんね。圭子、もうご飯食べた?近くにいるんだけど出て来れない?」

紗子から電話があったのはちょうど昼の1時をまわった時だった。圭子の職場は仕事柄、昼休みなんてものはない。昼食に行くのもみんなばらばらに好きな時間に行く。出勤時間が朝の10時なので、12時きっかりに昼食を食べる者は誰もいない。圭子も大体13時から14時ぐらいに、近くの喫茶店で打ち合わせを兼ねて軽い物を食べる。その事を知っている紗子は狙って電話してきたのだろう。

「ちょうど、外に出ようかと思っていたところだからいいわよ。どこにいるの?」

「圭子の会社の並びにあるスタバよ。」

「なんだ、近くじゃない。今日はお店は休みなの?」

「ううん。暇だから美由紀ちゃんにまかせて出てきたわ。」

紗子は青山で猫の額ほどの小さなブティックをやっている。猫の額ほどと言ってもそれなりのお金はかかる。全て別れた社長から手切れ金としてもらったものだ。イタリアのあるブランドに特化していて、直接イタリアに買付にまで行っているらしい。価格も手ごろらしく、二流セレブの御用達としてそこそこ繁盛しているようだ。美由紀というのは、前回の合コンでろくでもない男たちを連れてきていた紗子の店の従業員だ。紗子の遠縁にあたるらしく、昔から親分、子分のような関係が続いている。

「じゃあ、スタバで待ってて。すぐ行くわ。」

圭子はそう言うとバッグを持って外に出た。今日は夕方から都内のホテルで、ある作家とタレントの対談がある。

(紗子とお茶飲んでそのままホテルへ向かおう。)

スタバに着くと、奥にあるソファに紗子の姿が見えた。圭子は注文したサンドイッチとアイスのカフェラテをトレイに乗せて、紗子が取っておいてくれた前のソファへ腰かけた。

「お疲れ様!毎日、蒸し暑いわねえ。」

相変わらず派手目の洋服に厚化粧。紗子はそう言うと、扇子でパタパタと顔を扇いだ。

「この前は、ごめん。先に帰っちゃって・・・。」

「いいのよ。私こそ悪かったわ。医者が来るから期待して行ったのに・・・。変なのばっかりだったわね。アハハ。あ、そうそうこの前のお釣り返すわ。」

紗子はそう言うと、財布の中から五千円札を取り出し圭子の手にそのまま握らせた。

「ごめんなさい、たいしてお料理も食べていないのに・・・。次はもっといい人連れて来るように、美由紀ちゃんに頼んでおくわ。」

「もう合コンはいいわよ。それよりあの後は、どうなったのよ?」

「それがさあ・・・。ちょっと聞いてくれる?あの後、みんなでカラオケでも行こうって話になったんだけど、いつのまにか例の医者は帰るし、美由紀ちゃんの友達もいつのまにか帰ってるし、結局残ったのは私と美由紀ちゃんと、浜田とかいうお調子男と筋肉のかたまりで出来たような男、そう、あの警察官だっけ?その4人だけでカラオケ行ったのよ。」

「うん、それで?」

圭子はサンドイッチをほおばりながら話を聞く。

「カラオケ行ったら、お調子男が一人で歌いまくっちゃって・・・。たいしてうまくもないのにさあ、B’Zとか、GLAYとか。あの筋肉君は飲みすぎたのか、途中で寝ちゃうし・・・。ちっとも面白くなかったわ。私も適当なとこで帰ったわよ。」

よっぽどつまらなかったのだろう。紗子は一気にまくし立てた。

「ふーん。まあ、そんなことだろうと思ったけど・・・。」

「その、浜田が結局いろいろバラしたんだけど、あの杉本とかいう医者も2代目のボンボンなんだって!病院も小さな小児科らしいわよ。そんなに儲かってるような病院でもないって!あ、そうそうクルーザー持ってるとか言ってたでしょ?あれも嘘よ!」

「え!どういうこと?」

「一応、船はあるにはあるらしいけど、小さな漁業用のボートらしいわよ。後ろにモーターがついてるやつ。船上パーティーなんてやったことないんだって!まあ、そんな船じゃ何も出来ないだろうけどさ。」

「まあ!」

「あいつら、いつもあんなことしてるのよ!医者をダシにして女の子と合コンやってるのよ。きっと、杉本って男はいくらかもらってるんじゃないの?」

「・・・・・・・。」

その、医者というエサに見事に食いついたのはあんたじゃん!と、圭子は心の中で思うのだった。

「あんたらも、医者につられて来たんじゃろう?ヘヘヘ。」浜田の薄ら笑いをまた思い出した。

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「そうそう、美由紀ちゃんから聞いたんだけどさあ!私もビックリしたんだけど・・・。」

「何よ?」

「その、一次会で帰った、美由紀ちゃんの友達で亜紀ちゃんて目立たない女の子がいたでしょ?」

「うん。」

「もう一人アキバ系のような男がいたでしょ?大きなリュックサック持って来てた人。確か、遠藤とかいう・・・。」

「うん、うん!」

「その、亜紀ちゃんと今付き合っているらしいわよ!」

「え~!」

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑫ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・・・とうとう婚活を始めようと決心した博は、大手の結婚情報会社へ話を聞きに来たのだが・・・・。》

冨澤 博の場合

「冨澤さんは現在、40歳でいらっしゃいますね。来月には41歳になられるんですか。」

「あ、はい。」

「確かに年々、晩婚化傾向は進んでいますので、30代後半から40代前半のいわゆるアラフォー世代が増えています。しかしまだ20代の女性は結婚に対して純粋に憧れを持っている方が多いのも事実です。自分よりもせめて4~5歳ぐらいまでを希望する方がほとんどなんですね。」

「そうですか・・・。」

「冨澤さんは大卒で年収も平均よりは高くていらっしゃるし、見た目も身長も高くて素敵ですので、お申込みは多いと思います。ただ、年代では冨澤さんよりも3~4歳ぐらい年下の方が、一番多くご紹介出来ると思いますよ。」

「まあ、年齢はそんなにこだわっているわけじゃないんですよ。自分よりも年下だったら構いません。」

「分かりました。では、実際にパソコンを使ってシュミレーションしてみましょう・・・。」

それから西村という女はパソコンを使って、博の希望に合う女性のプロフィールを検索を始めた。

「お写真はまだ見せられませんが、この人なんかいかがでしょう?」

西村はそういうとノートパソコンの向きを変えて博に画面を見せた。そこには、ある女性のプロフィールと写真が表示されていた。ただ顔の部分だけは輪郭のみでぼかしが入っていたのだが。

・都内在住 ・34歳 ・会社員 ・身長162cm ・趣味・・・映画鑑賞、料理を作ること ・メッセージ・・・人からはおっとりしているとよく言われます。自分では人見知りをしない積極的な方だと思っています。最近、料理教室に通い始めました。家でもキッチンに立つことが少しずつ多くなりました。(笑)将来は明るくて笑顔の絶えない、温かい家庭を作れたらと思います。子供も大好きです。どうぞ、よろしくお願いします。

写真館で撮ったような写真である。バックはベージュのスクリーンで白っぽいワンピースを着た女性がポーズをつけている。いかにも典型的なお嬢様といったプロフィールだが、博が描いていた理想のタイプにぴったりだった。顔の輪郭のぼかしの部分に、例の山下の妻の“みーちゃん”の顔がついつい重なってしまう。

料理をする女性

「次の方もおすすめのお嬢様ですよ。」

そういうと西村は次々にいろんなタイプの女性のプロフィールを見せてくれた。もちろん全部顔は見えないのだが、すべて写真館で撮ったような一様に似たようなポーズをつけた写真ばかりだった。おそらく、男性向けのデモ画面のように割と見た目がいい女性ばかり載せているのだろう。どれも小柄でスタイルのいい女性ばかりだった。博はどうしても顔のぼかしの部分に“みーちゃん”の顔が重なってしまうのだった。

「もう、大体わかりました。料金を教えて下さい。」

博は、もう既に入会するつもりでいて、ネットで料金についても調べていたのだが念のために聞いてみることにした。

「かしこまりました。こちらをご覧ください。まず、入会金が税込で31,500円、事務登録料や初期費用で・・・・・」

(けっこうするもんだなあ。やっぱり望遠レンズはしばらくあきらめるか。)

結局、予想したよりも早く入会申し込み書に記入することになるのだった。独身証明書や(そんなものがあるなんて博は知らなかった)大学の卒業証明、昨年度の年収証明などを後日提出するのと、写真を提携している写真館で撮影するらしく、また次の土曜日に行く時間を伝えて博はその会社があるビルを後にした。

(いよいよ、結婚かあ・・・・。)

まだ写真も撮っていないのに、お見合いすらしていないのにもう結婚した気になっている。博はそれでもこみ上げてくる喜びを隠しきれなかった。遥か昔に感じたことのあるような気持ち。初恋の時のような、中学生のときに初めてデートした時のような、大学に入って初めて一人暮らしを始めた時のような、ワクワクとドキドキが入り混じったような不思議な感覚。

(せっかく新宿まで来たんだからヨドバシに行って望遠レンズ見に行こう。買わないけどね。その前にラーメンでも食べよう。)あらら、やっぱりこの勢いで望遠レンズ買うかもしれないぞ、こいつ。

冨澤 博。もうすぐ41歳。遅まきながらも婚活がようやくスタートしたのである。1章の圭子と運命的な出会いを果たす約1か月前の出来事であった。

第二章 冨澤 博の場合 終わり

つづく

 

 

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