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エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑪ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・ツーリングで新婚間もないカップルを見た博は41を前にして、本気で結婚を考えたり、考えなかったり・・・・》

冨澤 博の場合

ハッピーマリッジ・パートナー。ハートのマークに手と手をつないだようなロゴマークの看板が受付には掲げてあった。エレベーターを降りたらすぐ目の前に受付が見えたのだが、博はいったん気持ちを落ち着けるためにトイレへと向かった。

(やっぱり行くのやめようかな・・・。)

ここまで来ても相変わらず、意気地のない男だった。

先週、犬吠埼に行ってあれだけ張り切って灯台の写真を撮ったのだが、マンションに帰って整理してみると博が思っていた出来とは程遠かった。どの写真も被写体が小さくまとまりすぎていて、バランスはいいのだが面白みのない絵葉書のような写真ばかりだった。博が考えていた写真は、もっと迫力のある構図だった。波しぶきが灯台に当たって砕け散り、陽の光が灯台に反射して白さをより一層際立たせている。アングルもこの前のように上から撮るのではなく、灯台を下から見上げるような角度だ。波しぶきが当たって、太陽の光を浴びて、おまけに灯台の下からとなると、海側から撮るしかもう方法はない。それこそボートかなんかで冲に出て撮るしかない。しかし本人はいい道具さえ揃えれば何とかなると思っている。

(やっぱり300mmの望遠レンズ買うかな・・・。ついでに三脚も。)

だからプロのカメラマンじゃないんだから。しかもバイクで移動するのにそんなたくさんの荷物持ってどうすんの?って、傍に誰かいれば絶対にツッコみたくなるに違いないだろう。

博はネットの通販で価格を調べてみたが、いつも買うメーカーのレンズだけでも15万ぐらいする。三脚も軽量タイプの物で2~3万はする。

(全部で18万か・・・。そういえばこのパソコンも古くなったな・・・。一緒に買い替えるかなあ。ヨドバシのポイントも貯まってたしな。)

いろんな通販サイトや大型家電量販店のホームページなどで、価格を比べていたところあるバナー広告に目が止まった。

“そろそろ嫁さんほしいなあ・・・。”アラフォーからの婚活はハッピーマリッジ・パートナーへ!

一度、ネットで面白半分で検索してから、パソコンを開く度にこの類のバナー広告が出て来るようになった。

“お見合いパーティーは○○”“運命の人に出逢える・・・”“結婚するなら○○へ 今すぐ資料請求”etc・・・。うっとおしくてしかたがない。いつもなら、放っておくのだが博はこの前の犬吠埼での山下の言葉を思い出していた。

「バイク手放したんですよ。守るべきものが出来たっていうか・・・。」

あの時の山下の顔は誇らしげだった。とてもカッコよく見えた。その守るべき人の“みーちゃん”も可愛かった。そしてそのお腹の中にいる子供もきっと守っていかなきゃならない新しい命だろう。

博は、望遠レンズと三脚は冬のボーナスまで待つことにして、その“ハッピーマリッジ・パートナー”の「あなたの結婚本気度チェック」というボタンを思わずクリックしてしまったのだった。2~3日すると白い大型封筒に入った、いろんなパンフレットや資料、担当者の名刺、“あなたの恋愛診断テストの結果”なるものが届いたのだった。ろくに中身も見ない博だったが、届いた日のその日の夜にその会社から電話が入ったのである。

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「こんばんは。冨澤様の携帯でお間違いなかったでしょうか?私、先日資料請求頂きました、ハッピーマリッジパートナーの西村と申します。資料はもうご覧になりましたか?」

西村という女は少し癖のある高い声で、流暢にまくし立てた。おそらく誰もが予想する通り、博という男は営業に弱い。若いころはネットワークビジネスで鍋やら洗剤やら一式買わされたあげく、英会話に始まり、自己啓発のセミナー、速読キット、男性エステ(脱毛)までありとあらゆるものまで、契約させられた経験がある。マンションに住む前は、アパート形式の作りだったので、新聞も3大誌と経済新聞まで取っていた。さすがに今はオートロックのマンションなので、新聞の勧誘に合うことはないが・・・。要するに断りきれないのだ。押しに弱く、素直に人の意見を聞いてしまう。さんざん話を聞いて最後に断るのは相手に失礼なんじゃないかと思ってしまうのだ。そこまで言うなら騙されたと思ってやってみるかと思ってしまう。本当に騙されているようなものだが。

今は、通販のカタログやネットが盛んになっているので、お店に行くことなく必要なものだけ買えるのが嬉しい。いつだったか紳士服専門店で、Yシャツとネクタイだけ買うつもりで入ったのにスーツ2着にYシャツ2枚、ネクタイ3本、ベルトに靴下まで買わされたことがある。確かにその時、接客した女性の営業力が素晴らしかった。多分、博でなくても・・・・・買わないよ!必要ない物まで買うバカがどこにいる?確かにこの年になるまで、独り者だったのでそれなりに金はあるのだが・・・。先日の山下を見たときに、結婚したいなあと単純に思ったものだが、帰ってきて冷静になってみると、実のところ、もう好きな物を自分勝手に買うことも出来なくなるのだなあとも考えた博であった。

とにかくその大手の結婚相談所、ハッピーマリッジ・パートナーという会社の西村に誘われて、今日はのこのこ話を聞きにきた博であった。今日は、話を聞いてみるだけだ、と自分に言い聞かせながら。まあ、おそらく入会させられるんだろうけど。

トイレで用を足すわけでもなく、しばらくうろうろしてから結局、受付の呼び鈴を鳴らした博は、奥の個室へと通されたのであった。意外に広い店内は、白い壁で統一されていてとても落ち着いた雰囲気である。日曜日ということもありほとんどのブースに客が埋まっているようだ。また、受付から横に伸びた通路には別室でもあるのだろうか。ガヤガヤと談笑しているような声が聞こえる。おそらくパーティーでも開催されているのかもしれない。このハッピーマリッジ・パートナーという会社は大手の結婚情報会社では老舗の会社らしく、日本最大の会員数がウリのようだ。広告も新聞、雑誌、インターネットまで幅広く出している。バスの車体にまでデカデカと大きな広告が入ってるのを見かけたこともある。例の「そろそろ嫁さん欲しいなあ・・・」というやつだ。

博はブースに通されると、何やらアンケートのようなものやご希望条件などを書く用紙を渡された。

・あなたの休日は? ○おもに土日祝日 ○平日 ○不定期

・出会いの機会は? ○自ら作る ○他人の紹介に頼る ○運に任せる

・いくつまでに結婚したいですか? ○いい人がいたらすぐ ○数年先 ○わからない

・お相手に優先するのは? ○価値観 ○ルックス ○職業や学歴、収入など条件

・あなたは? ○積極派 ○消極派 ○どちらでもない

・お相手に希望する年齢は?      歳~   歳

・お相手に希望する学歴は?      卒業   ○こだわらない

・お相手に希望する年収は?      万円~   万円 ○こだわらない

・お相手に希望する身長は?      cm~   cm ○こだわらない

・お相手に希望する婚姻歴は?  ○初婚 ○再婚可 ○特にこだわらない

などと細かいことがびっしり書いてある。博は休日は土日、出会いの機会は運に任せる、あなたはいくつぐらいまでに・・・を数年先くらい、お相手に優先するのはを価値観、あなたは?を消極派に〇をした。また、希望条件については、25歳~35歳、学歴を大卒、年収はこだわらない、身長155cm~165cm、婚姻歴は初婚とした。本当はお相手に優先するのは?のところはルックスに〇をしたかったのだが、当然ながらシャイな博にそんな厚かましいことが出来るわけがない。年齢を限定したのは、やはり山下の嫁さん、みーちゃんが頭に残っていたからだろう。

(あんな嫁さん欲しいなあ・・・。)

電話の甲高い声のイメージ通り、西村という女はいかにもやり手の営業マンという感じがした。少しつり目でメガネをかけていて、顔は笑っているのだが眼だけは笑っていない。博が書いた用紙を見て開口一番、西村はこう言った。

「冨澤さん、年齢が20代の方は厳しいかもしれませんね。」

「?!・・・・・・・・・・。はあ。」

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑩ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・灯台の写真を撮りにツーリングに出かけた博は、そこで見かけたカップルが落としていった鍵を拾ったのだが・・・。》

「あの、もしかして鍵を落としてませんか?これ?」

博は間違いないと思い先に声をかけ、手に持っていた鍵をブラブラさせた。

「あ!ありがとうございます!どこにありました?」

「上のベンチのとこにありましたよ。」

「やっぱり!駐車場に着いて車に乗ろうと思ったら、鍵がなくて・・・。」

あごひげの男はほっとした顔で博から鍵を受け取った。白い歯がこぼれた。

博は、自分も駐車場に行くことだし、連れだって歩き出した。

「ありがとうございました。埼玉から来た山下と言います。お名前お聞きしてもいいですか?」

「冨澤と言います。」

見た目よりも、声の調子が柔らかくて人の良さそうな感じがする男だ。

「もしかしてハーレーで来られた方ですか?」

「え、・・・・?」

「いや、ブーツ履いてらっしゃるから・・・。」

確かに博の恰好は誰が見ても分かるライダーの姿だ。黒い革のライダーパンツにブーツ、ジャケットは少し派手だがハーレーダビッドソンとロゴが入った革ジャンを着ている。駐車場に着くと黒いワンボックスカーの前で女が立って手を振っていた。山下という男は、博にあきらかに自分の鍵だとアピールするかのように、手を伸ばしてリモコンで車のロックを解除した。ピッという音がしてドアが開いた。

「みーちゃん、この方が鍵を拾ってくれたんだよ。」

(?!やっぱり、みーちゃんって言うのかよ・・・。)

「どうも、ありがとうございました!」

みーちゃんと呼ばれた女は、よく見たら若かった。まだ20代なのかもしれない。小柄でショートカット、幼い感じがする顔立ちをしていた。

「じゃあ、気を付けて。」

それだけ言うと博は自分のバイクがある方向へ歩き出した。鍵を拾ってあげただけなのに、博はなんとなくいい気分になっていた。また、二人とも笑顔で好感の持てる人間だったことも素直に嬉しかった。

(みーちゃんかあ・・・。男はそんなに俺と変わらないはずなのに、女の方は若かったなあ・・・。彼女だろうなあ。いや、もう結婚してるのかなあ。)

実は、ああいうタイプの女の子は博が最も好きなタイプなのだった。ちょっと天然ぽいが、あけすけに明るい。お酒のCMに出ている女優に似ている。最近、結婚したとTVのワイドショーでやっていた。博はなんだかやるせないような気持ちになったのだが、朝から何も食べておらず腹が空いていたことに気づいた。

(せっかくここまで来たからには、新鮮な魚を食べよう。名物の海鮮丼にするか・・・。)

こんな調子なんである。お前も早く結婚して美味しい物作ってもらえよ!とツッコミたくなるところだ。博がカメラをハーレーのキャリーバッグに直して、シートの上でガイドブックを広げてその海鮮丼が有名な和風レストランの場所を確認していたところ、後ろからさっきの男の声がした。

「かっこいいですねえ。ファットボーイですね。何年式のモデルですか?」

そう言うと、山下はよく冷えた微糖タイプの缶コーヒーを差し出した。

「あ、ありがとう。これは、2010年モデル。ツインカム96B、ロータイプです。」

「かっこいいですね。バイクはやっぱりハーレーですよねえ。俺も“パパサン”に乗ってましたよ。」

通称パパサン。ハーレーダビッドソン・スポーツスターXL883L。排気量が883ccなので数字をもじってパパサン。ハーレーの中でもスポーツロードスタータイプに区分けされるこのタイプは、軽量コンパクトで取り回しが楽で女性ライダーにも人気が高いバイクだ。バイクをかじったことがある者なら“パパサン”だけですぐ分かる。博はあまり好みのバイクではないのだが・・・。

「パパサンかあ。音が独特だよね。今日はバイクじゃなかったの?」

「いやあ、もう手放しちゃって・・・。今は車だけです。」

「そうですか・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・。」

バイクに乗っていると、こういうことはよくある。特に中年のオヤジが高速のSAあたりで休憩を取っていると声をかけてくる。昔、乗り回していた頃を思い出しながら、ノスタルジックな気分に浸りたいのだろう。

「音、聞かせてもらっていいですか?」

「あ、いいですよ。」

博はガイドブックをウエストポーチに押し込みながら、キーをイグニッションに差し込みセルのスイッチを入れた。

ドド、ドド、ドドドド・・・・・。一発でエンジンが始動し、小気味よい重低音が響く。2007年以降のタイプはエンジンの変更に伴い、かなり静かになったのだが、それでもこのサウンドはハーレー独特のものだ。生き物の鼓動のような音はまさに鉄で出来た馬だ。

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「いいですねえ、ハーレーの音は・・・。また、バイク欲しくなったなあ。」

「もう、乗らないんですか?」

「いやあ、それが、さっきいた女はカミさんなんですけど、もうすぐ子供が生まれるんですよ。もう俺も40超えてるし・・・いやあ、カミさんは俺よりもずいぶん若いんですけどね。まあ、これから金もかかるし、そんなに乗る暇がなくなったというか・・・。カミさんにもあぶないからもうバイクは卒業してなんて言われちゃって・・・。ハハ・・・。確かに守らなきゃいけないものが増えてきたんで、しょうがないんですけどね。これからは“パパサン”じゃなくて“ママサン”に乗りますよ。ハハ。」

山下という男は聞きもしないのに、あっけらかんとした調子で語った。よっぽどバイクが好きだったのだろう、しばらく博のハーレーを眺めていたが、そこへそのカミさんがやって来た。

「ケンちゃん、何してるの?早く行こうよ!」

(さすがに男はマーくんじゃあないんだな。)

「あ、ごめん、ごめん。じゃあ、失礼します。気を付けて帰って下さいね。」

それだけ言うと、山下は女の肩を後ろから抱えるようにして去っていった。女にバイクをじっと見ている姿を見られたくなかったのだろう。先ほどとは打って変わって明るく振る舞っているようにも見えた。博には、その姿が逆に誇らしげに写った。山本という男がむしろバイクよりも素晴らしいものを見つけたのではないかと思った。そのカミさんが博の好みのタイプの女性だったからかもしれない。二人が持つ清々しいほどの明るさを羨ましく思った。その幸せに嫉妬した。博は初めて心から結婚したいと思った。41年間生きてきてようやくその気になったのだ。

(ケンちゃんかあ・・・。とりあえず、海鮮丼食べに行こう!)

博はヘルメットを被り、愛馬に跨った。前章で圭子が合コンをした次の土曜日の話である。かたや38のアラフォー女、かたや出会いのない41のイケメン中年。二人が出会うのはまだ先の話である。

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。 婚活小説 連載9回目 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・もうすぐ41歳になる冨澤博は暇さえあればカメラを持って愛車のハーレーで出かけている。今日は灯台と海の写真を撮りに犬吠埼までツーリングに来たのだが・・・。》

博は灯台を入れた海の写真を撮りたかったので、満足がいくアングルをあちこち探してまわった。しかし、灯台が大きすぎて海が入らなかったり、逆光になったりとなかなかいい場所がない。周囲をひたすら歩きまわり、何度もシャッターを押したが納得がいく写真は撮れなかった。もともとそんないい写真を撮る腕もないのは言うまでもない。ようやく、灯台が見下ろせる小高い臨時の駐車場のような場所を見つけた。

(ここなら逆光にもならず灯台と海がいいバランスで撮れるかもしれない。)

博は出来るだけ前方で撮ろうと思い駆け寄ろうとした。するとベンチに腰かけていた二人のカップルがいることに気づき足を止めた。見ると肩を寄せ合いながら、ベンチと同化したように静かに海を眺めている。頭を低くしてもたれ合っていたので、最初はよく見えなかったのである。側には、自動販売機がたくさん並んだ簡単な休憩室のようなものがあり、いい具合に逆光を遮ってくれている。左右に移動してみたが、どうしてもカップルがアングルに入ってしまう。その休憩室がある突端の裏側に回れば、きっといいポジションがあるはずなのだが、その為にはどうしてもカップルの前を通らなければならない。博はしばらく考えていたが、そのまま待つことにした。なぜか?恥ずかしいのである。特にカップルに見られるのはいやなのだ。「この人、休みの日に一人で写真撮るのが趣味なんだわ。それに比べて私たちは幸せよねえ、マーくん!」「そうだよ、みーちゃん!」なんて会話がきっと口に出さないまでも、心と心で交わされているはずなのだ。マーくんとみーちゃんはこの際誰でもいいのだが・・・。

(もう、あきらめるか・・・。さっき撮った写真でいいか。どうせ誰に見せるわけでもないんだから・・・。)

博は業を煮やしあきらめて帰りかけようとしたところで、そのカップルが立ち上がるのが見えた。博は思わず、下を向いて顔をそらした。急に動くのも、なんだかずっと見ていたのを、誤魔化すようなので不自然だったからである。博はクールな二枚目の顔なのだが、絵にかいたような恥ずかしがり屋なのだ。しかも恥ずかしがっているような素振りすら人には見られたくないのだ。来月で41にもなるというのに。

それでも目の前を通り過ぎていくときに、ちらっと横目で盗み見てみると、意外にも若いと思っていたカップルが自分と変わらないぐらいの年齢だったことに驚いた。男はおそらく30代後半か40代前半だろう。女のほうはうつむいていたのでよく顔は見えなかったが、男とそんなに変わらない歳だと思う。男の方は、日に焼けた顔にあごひげを生やしていた。真っ白いTシャツが分厚い胸板を一層際立たせている。大きな声で、「何を食べに行こうか?」などと言っているのが聞こえる。おそらく灯台横の駐車場に停めていた車で来たカップルだろう。女はしっかりと、男の腕をつかみゆっくりと歩いていった。

博は二人の後ろ姿が視界から消えるのを待って、前方の突端に向かって歩き出した。

(いい感じだぞ・・・。)

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予想した通り、その場所からみる景色は灯台の白さとコバルトブルーのコントラストがよく映えた。博は夢中になってシャッターを押し続けた。角度や方向を変えながら、たくさんの写真を撮った。ベンチの上に登り、高い位置からの写真も何枚か撮ろうと思った時に、木製のベンチの隙間にキラリと反射する物が見えた。

(う?)

近寄り手に取ると、銀色の輪っかのようなものにつながれた鍵がいくつか付いている。いくつかはよくある家の鍵やロッカーの鍵のような物で、一つはある車のメーカーのエンブレムがかたどってある車のキーだった。

(さっきのカップルが忘れていったのかな・・・。)

博はそのままにしておこうとも思ったが、先ほどの二人ならまだその辺にいると思い、探して届けてやることにした。いなければ灯台脇の駐車場の管理人にでも預ければいいのだから。カメラをキャリーケースに入れ、灯台へ続く車道を足早に下りて行った。すると案の定、さっきの男が下を見ながら登って来るのが見えた。

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。 婚活小説 連載8回目 作 エンジェルおじさん

第二章 冨澤 博の場合

犬吠埼に着いたのはお昼を少し回った頃だった。梅雨の間の久しぶりの晴れ間にしては車が少なかった。博が住んでいる品川からは2時間半で来た計算になる。土曜日のこの時間ということもあるのだろうが、犬吠埼の灯台には観光客もまばらで、何組かのカップルと若い家族連れがいるだけだった。博は灯台脇の駐車場にバイクを停めて、缶コーヒーを飲みながら改めて自分のバイクを眺めた。マフラーが銀色の眩い光を放っている。ハーレーダビッドソン、FLSTFファットボーイ。重厚感たっぷりの車体はハーレーの中のハーレーと言われるゆえんに相応しい。そう、ターミネーターⅡでアーノルド・シュワルッエネッガーが乗っていたバイクである。博はハーレーはこれで2台目だが、歴代のバイクの中ではこの愛馬が一番気に入っている。

博はどちらかといえば家にいるよりも出かけることの方が多い。暇さえあれば最近買った一眼レフのデジカメ片手に、バイクに乗って出かけている。しかしせっかく撮った写真も誰かに見せるわけでもなく、ブログやfacebookに載せるわけでもない。一応自宅のパソコンのフォルダには保存しているものの、自分ですら写真を見ることもない。ましてや人物が映っていない素人の風景写真など誰が好き好んで見るものか。最近は、写真の編集作業も面倒になりタイトルも付けずに、日付だけが記録された写真がいたずらに溜まっている。

せめてセルフタイマーで自分も一緒に撮るとか、誰かにシャッターを押してもらえばいいものを、博にはそれが出来なかった。一言で言えば恥ずかしいのである。「こんな場所に一人で来て一人でいつも写真撮るのかしら?」なんて思われたくないのである。セルフタイマーでピースサインなんか出してポーズをつけてるのを、誰かに見られたら死んでしまいたいぐらい恥ずかしくなるのだ。だったら最初からそんな本格的な一眼レフカメラなんか持って来なければいいのに・・・。コンパクトカメラかスマホで撮影すればいいのにと思うのだが・・・。そこだけは違うのだ。変なこだわりがあるのだ。ケータイで撮るような写真は芸術ではないと思ってしまうのだ。芸術作品を撮るような腕があるわけでもないのに・・・。

しかし、誰も見る人がいなくても、編集作業が面倒くさくなっても、毎回、毎回、性懲りもなく博は風景写真を撮り続けている。この頃は出来るだけ、地名や名前がある建物も、一緒に撮るようにしてせめてどこに行ったかは、分かるようにだけは工夫している。いつだったかどうしても山肌を赤く染める夕焼けの写真が撮りたくなり二週続けてどこかの山に行ったことがある。いや、どこかというのは分かっている。群馬か長野だ。いいベストショットが撮れたのだが、それが群馬で撮ったのか、長野で撮ったのか分からず悲しくなってしまった。今もってどっちの写真なのか分からない。もう一度両方の場所に行くしかない。行ってもたくさん撮りすぎたので、どの場所か分からないのだが・・・。

冨澤 博、このエピソードだけ聞くと、ちょっとズッコケたいかにも冴えない独り者の男のようだが、顔だけ見ると彫りが深くなかなか甘いマスクをしている。もちろん、そんな自惚れたことを平気で思っているわけではない。来月で41になるが、今まで生きてきて何度も「いい顔している」とか「俳優のY.Tに似ている」とか言われたことがあるからだ。まあ、確かに自分でもそんなに悪くはないとは思っているのだけれど・・・。国立の工科大を卒業してずっとエンジニアの仕事をしている。海外にも支社がある大手の企業である。当然、給料もいい。ハーレーを新車で2台も買い替えるぐらいどうってことないのである。住んでいるのも品川のデザイナーズマンションだし、天気のいい日にはスカイツリーも見えるのだ。条件だけ見れば申し分ないのだ。そう、いないのは彼女だけである。もちろん結婚を誓い合った幼馴染の婚約者がいるなんて話も聞いたことがないのである。

(今日は灯台をメインに写真を撮ろう。なんかいい絵が撮れそうな気がする。)

のん気である。プロのカメラマンにでもなったつもりなんである。嫁さんがほしいなんてちっとも考えていないのだ。4歳年下の弟は25歳で結婚して今は子供が3人もいる。嫁はJAの職場で知り合った地元の女の子だ。実家の両親と嫁と子供とみんなで仲良く暮らしている。典型的な田舎の風景だ。博が実家に帰っても居場所がない。いや、居場所はあっても居心地が悪い。もちろん最近はあまり実家に帰ることもないが・・・。さすがに正月だけは顔を出すのだが、普段は会わない親戚までやって来るので余計に居心地は悪い。「博君も、いくつになったんだっげが?そろそろ孫の顔でも見せで親父ば安心さしちゃれや。」って必ず言われるに決まっているのだ。その話が出る度に酒が飲めない博は、いつも無理をして日本酒を飲んで寝たふりをすることになるのだ。実際に具合が悪くなって本当に寝てしまうのだが・・・。

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博は房総半島から見る海が一番好きだった。

(日本海は女の海で、太平洋は男の海だなあ。)

などと、とても口に出して言うのが恥ずかしいような言葉を平気で心の中でつぶやいているのだ。

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。エンジェルおじさんの婚活ブログ小説 連載7回目

《前回までのあらすじ・・・酔っぱらった会社の部下の由美を迎えに、勝木が待つレストランへ向かった圭子は、結婚について問われて・・・。》

「あのなあ、よく聞けよ。結婚するのはお互いに愛し合って一緒に居たいと思うからだろ。好きで、好きでたまらない人と一緒にいたら抱きしめたいと思うだろ?そして肌を重ねたい、触りたい、キスしたい、お互いに気持ち良くなりたいって思うだろ。好きな人が気持ちいい顔をしていたら嬉しくなるだろ?もっともっと喜ばしてやりたいって思うだろ。じゃあ手っ取り早い喜ばせ方はあれしかない。結婚したらいつでも好きな時に抱き合える・・・。だから結婚するんだよ。」

「先生!そんなの暴論です!おかしいです!変です!じゃあ、結婚するのは“それだけ”の為だけということですか!」

ついつい圭子は声を張り上げていた。気が付けばあっという間にワインを4杯も立て続けに飲んでいる。

「コラ!ちょっと声を抑えろ!お前は学級委員長か!ったく!」

「もちろん、それだけの為に人は結婚するんじゃない。そんなことは当たり前だ。結婚というのは、お互いに愛し合っていたら片時も離れずに、ずっと傍にいれる一番の手段だからだ。傍にいたら相手を触ることが出来る。触ることで人は安心するんだな。これは人だけじゃない、犬でも猫でもそうだろ?撫でてやってる時は嬉しそうな顔してるよ。人間は目の前にいる人を触って確かめることで、相手も自分も生きていることが実感出来る。相手の胸の鼓動や、体温や汗を感じることでますます人は生きていると強く思う。それをいつでも体感するためには一緒に暮さねばならない。いつでもすぐに触れる態勢を取っておかねばならんからな。だから結婚するのさ。・・・・・まあ、ちょこちょこ触っているうちにムラムラしてくるから結局はやっちまうんだがな。ワハハ!」

「もう、何ですかそれ!変な理論ですね。」

いつもこれだ。真剣に聞こうと思うと、茶化されてしまう。最後はわかったような、わからないような話で煙にまかれている。おまけに、勝木は脚本を書いているだけあって、役者さながらにおしゃべりがうまい。抑揚をつけたり、間を取ったり、ギョロ目で見つめたり。いつの間にか話に引き込まれてしまう。

「確かに先生の言うことも一理あるような気もしますね。」

少し考えてから圭子は口を開いた。いつのまにか勝木の目から逃げられない自分がそこにいた。(すこし酔ってるのかしら。)

「そうだろう?だがな、俺は最近になってこれは間違っていることに気が付いた。」

「え?どういうことですか?」

「これは結婚してないお前さんに言うのは気が引けるが・・・。まあいいか。実はあんなに毎日触って生きていることを確かめたかった女房が、1年もしないうちに触りたくなくなったんだよ!もちろん女房も触ってこなくなったがな!その代り違う女の子を触りたくなっちゃったんだよ。だから、いろんな女と結婚しなきゃならなくなった!ワッハッハ!」

「・・・・・はあ~?!」

真面目に聞いていた自分がまた情けなくなる。この嬉しそうに話している姿は、茂木編集長とちっとも変らない。まだ見た目は勝木の方がましな方だが、中年のオヤジタレントで“日本一いいかげんな男”としてTVに出ているコメディアンと重なるときがある。笑い方もギョロ目のところもそっくりだ。

遥か昔に一度、勝木が結婚したというのは嘘ではないのだろう。勝木が結婚していたということを改めて想像したら圭子はまたおかしくなってきた。いったいどんな奥さんだったのだろう・・・。当時はまだ本が売れなくてヒモのような生活をしていたと編集長に聞いたことがある。いつ別れたのかは知らないが、勝木の気ままな独身生活はもうかなり長くなるはずだ。

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(結婚は何のためにするんだ?って偉そうに!よく考えたら先生だって結婚に失敗してるんじゃない!)

5杯目のワイングラスを飲み干したところで、圭子は席を立った。前にも紗子との酒のエピソードでもあったように、圭子は酒が強い。父も母も全くの下戸だというのに。亡くなった母方の祖父がかなりの酒豪だったらしい。「お前はお酒が強いのと頑固なところは、おじいちゃんの血を引いてるのよ」と常々、母が言っていたのを思い出した。

「じゃあ、先生。そろそろ失礼します。どうも御馳走様でした。原稿はちゃんと私が責任を持ってお預かりします。」

「おう!またな!俺は一段落したんで、明日からしばらくタイに行って来るよ。お土産買ってきてやるから、楽しみにしてろよ!」

「はい、よろしくお願いします。」

どうせタイには誰か女でも連れて行くのだろうが、そこで掘り下げるとまた話が長くなりそうなので切り上げることにした。圭子は外に出てタクシーを拾おうと考えたが、またさっきのような無愛想な運転手だったら嫌だなあとふと思った。

「おい、この娘もちゃんと連れて帰れよ!じゃないと俺が家に連れてくぞ!ハハハ。」

「どうぞ、連れてってもらってもかまいません。お好きなようにして下さい。」

「コラコラ、冗談じゃないぞ。俺はこんなションベン臭いガキは相手にしないんだ。女は40過ぎてからが一番味が出てくるんだよ。そう、お前さんぐらいがちょうど食べごろなんだ。ハハハ。」

「何べんも言いますが私はまだ38です。念のため。」(これでこのセリフは今日3回目だ。)

やっぱり今日は少し酔いが回ってきたのかもしれない。ふらつきながらも半分寝ている由美を抱きかかえた。

「松本さん!しっかりしなさい!起きなさい!帰るわよ。」

「う、う~ん。」

由美を引きずるようにして店の外へ連れ出し、タクシーへ放り込む。電話して会社の前で待たせていた営業部の後輩の男に、由美と原稿を預けた。この男はいつか給湯室で私の悪口を言いながら由美を慰めていたやつだ。ちょうどいい。また、後で何か陰口を叩こうがかまうものか。

「お疲れさん、まず勝木先生の原稿を編集長のところに届けて!それから松本さんの酔いを覚まして、ちゃんと家まで送ってあげてね!じゃ、さよなら!」

「え!兵頭さん!ちょっと待って!」

後ろで男が叫んでいるのが見えたが、そのままタクシーを走らせた。(今日はもう疲れたから、このままタクシーで帰ろう。)運転手に行先だけ告げると、圭子は目をつむった。今度こそマンションに帰って、一人で冷えたビールを飲むんだ。そういえばハイボールやらワインばっかりでろくなものを食べていない。冷奴に冷やしトマト、マヨネーズを付けて食べなきゃ!まあ、冷奴もトマトもそのまま皿に盛るだけだから、ろくなものに変わりはないか。

「ふう。」

圭子は自分でも分かるほどお酒の匂いの溜息をついた。(本当に今日は、疲れたわ・・・。)

「お客さん、飲み会でしたか?いい匂いさせますねえ!やっぱこの季節はビールですか?」

「・・・・・そうね。」

「先に降ろしたお嬢さんもけっこう飲んでましたなあ!」

「・・・・・まあね。」

こんな時に限って、運転手がうるさくしゃべりかけてくる。圭子はええ、とかまあとか適当に頷いて寝たふりをすることに決めた。そういえば、さっきの無愛想な運転手も逆に何かあったのかもしれない。私を乗せる前に、乗車した客がとても横着な客でしかもワンメーターぐらいの距離だったりして。しかも、そんな客がずっと続いていたら・・・。本当はこの運転手さんみたいに、普段はよくしゃべる人なのかも。人間ってちょっとしたことで、ハイになったりブルーになったりするものだから・・・。これも、勝木先生が言ってたことだわ。そんなことをつらつら考えながらも、今度だけは念のためにタクシー会社と運転手の名前を憶えておこうと薄目で確かめるのだった。

(東光タクシー、前田 明さんね。マエダ アキラ・・・。マエダアキラか・・・。マエダアキラって確かプロレスラーがいたわよね。あれは字が違ったっけ。前田日明って書くんじゃなかったっけ?なんで日明って書いてアキラって読むのかしら。・・・・そういえば前田日明ってもう引退したのかしら・・・・・・。)

「・・・・・・・・・・・・。」

「お客さん!着きましたよ!」

「・・・・・・・・・・・・。」

「お客さん!起きて!」

「あ、ハイ!」

慌てて圭子は飛び起きた。まだまだ、圭子の夜は終わらないのだった。

次回 「冨澤 博の場合」 へつづく

 

 

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