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エンジェルさん、こんにちは。 エンジェルおじさんの婚活小説 連載6回目

《前回までのあらすじ・・・アラフォーの圭子は友人の紗子に誘われて、合コンに参加したところ冴えない男たちに嫌気が差し途中で帰ってしまう。そこへ酔った部下の由美から電話があり、作家の勝木がいるレストランへ向かったのだが・・・。》

圭子が店の扉を開けると、奥の方の席から勝木が手招きしているのが見えた。

「こっちだ!」勝木の響く低い声がする。

カウンター席が7席にテーブルが3つしかない小さな店だが、今日はテーブルもカウンターも殆ど埋まっている。カップルもいれば会社帰りのサラリーマン風の男もいる。カウンターのコーナー席は、いつも通り空けてあるのだが、今日は由美がいるからしかたなくテーブル席に座ったのだろう。観葉植物が目隠し替わりになる奥のテーブル席は、そこだけ別な空間のように思え圭子はまた嫌な気持ちになった。

(私だって先生とはカウンターでしか飲んだことないのに・・・。)

しかし考えようによっては、勝木がいつもの席に座り、横に圭子を座らせお酒を一緒に飲むということは、それだけで十分気の許せる間柄だと思っているのかもしれない。圭子は無理に自分に良い方に考えることで、気持ちを落ち着かせたかった。

「すみません、お待たせしました。」

「おう!お疲れさん。早かったな。」

「すみません、部下がご迷惑をおかけしまして・・・。」

その部下を見てみると、由美は椅子に座ったままで、眠りこけているようだ。ピクリともしない。微かに寝息が聞こえる。

「いいよ、いいよ。俺が調子に乗って飲ませちまった。ワインはよく飲むし、俺と同じもの飲みたいって言うからさ・・・。」

(それって、さっきの合コンでの医者の杉本の前で美由紀と紗子が言っていたセリフじゃない?!)

圭子は美由紀の、「今日は杉本さんとおんなじワイン飲んじゃいます~!」という鼻にかかったような声を思い出した。

少し口を開けて寝ている由美を見ているとまたムカムカと腹が立ってきた。

「ちょっと、松本さん!しっかりしなさい!起きなさいよ!」

圭子は由美の肩を揺すったが、ムニャムニャ言うだけで起きない。会社に帰ったら、今度こそ徹底的に説教してやる。ごちゃごちゃ言うのなら引っ叩いたって構うものか。次に泣いたことが分かれば、部署を変えてもらうように編集長に進言しよう。

「まあ、まあ、もう少し寝かせといてやれ。お前さんもちょっと飲めよ。少し落ち着け。顔が般若の面のようになってるぞ。」

「!?・・・・・。」

「合コンだったんだって?茂木チャンに聞いたよ。」

(あの、ハゲちらかしはまた余計なことを・・・。)

「いえ、友人が店の女の子に頼んで男の友達を連れてきたらしくて・・・。」

「フフ。それを普通合コンって言うんじゃないのか?」

「・・・・・・・」

そういえばそうだ。確かに私は、いやいやながらも合コンに参加した。紗子みたいに医者に興味はないけれど、どんな男が参加しているのかちょっと見てみたい気持ちはあった。また、あのお調子男の浜田の薄ら笑いが頭に浮かぶ。「あんたも医者目当てなんじゃろ?へへ。」また、カッとなってしまった。

「じゃあ、一杯だけ戴きます。」

圭子は勝木が注いでくれたワインを一気に飲み干した。味も何も分からなかったが、圭子は考える事が嫌になっていた。“とりあえず”酒でも飲んで忘れたいと思った。とりあえず?・・・。広島弁でとりあえずっていうことを“たちまち”って言うんすよ!また、あの浜田の声が浮かぶ。

(何が、“たちまち”よ!)

「さっきから何をぶつぶつ言ってんるんだ?まあ、もっと味わって飲めよ。それじゃあ横で寝ているそのお姉ちゃんの飲み方と、変わんないぞ。」

勝木がまたワインを注いでくれた。もうすでに1本空けたのだろう。注いでくれたボトルもまた空になり、同じ銘柄のワインをまた注文している。勝木も今日は日焼けした顔が赤黒く染まっている。

「ところで「お前さんは、結婚しないのか?」

いきなり勝木が口を開いた。また、射入るような目をしている。目つきは優しいのだが、圭子はこの目が苦手だった。この目で見られると、嘘はつけないような気がするのだ。

「まあ、いつかは結婚したいなあって思ってはいるんですけどね。相手もいないし・・・。今のところ仕事も楽しいし、そのうち何とかなるでしょう。何ともならないか。ハハ。」

「そうか、付き合っているやつはいないんだな?」

「今はいませんねえ。」

「あっちの方はどうしてるんだ?身体だけの付き合いみたいな男はいるのか?」

「先生!変なこと言うのはやめて下さい。そんな人はいません!」

「変なことじゃないだろう?じゃあ聞くがお前さんは一体何のために結婚しようと思うんだね?」

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勝木のお得意のからかいが始まった。今日は、私の代わりに由美で遊んでやろうと思ったものの、飲みだしたとたん由美が酔っ払ってしまって、相手にならず面白くなかったのだろう。私がここに来るのを手ぐすね引いて待っていたような気がする。こうなったら勝木の話に付き合うしかない。ちなみにあっちの方は、3年前が最後だった。当時、付き合っていた彼は大学のサークルの先輩が紹介してくれた友人だった。山形出身の朴訥な人だった。圭子は経験がそんなに多い方ではないので、良くわからなかったが、お世辞にもHは上手くなかったと思う。1年も付き合わなかったが、山形の父が亡くなったので農家を継ぐ為に帰っていった。帰る前に、一度だけ山形に来る気はないか?と聞かれたことがある。圭子が黙って笑うのを見て彼は少し涙ぐんでいたようだ。そして1年もしないうちに紹介してくれた先輩から結婚したと聞いた。彼の家は山形でも有数のさくらんぼ農家らしく、ネットを使った通販をいち早く取り入れたのがうまく当たったらしく、今では会社組織で全国展開をしているらしい。あの時、もし私が彼と結婚していれば今頃はさしずめ社長夫人ということか・・・。紗子なら結婚していただろうか・・・。紗子が“コンカツ”“コンカツ”と大騒ぎしているのを、冷ややかな目でいつも見ている圭子だったが、確かに何の為に結婚するのかなんて一度も考えたことはない。圭子はそんなことを考えながらゆっくりと答えた。

「何のために結婚するかなんて考えたこともありません。普通、結婚するときに何のために結婚するのか?なんて考える人はいないと思いますけど?じゃあ、先生は何のために結婚したんですか?」

「かあ~!これだからなあ。お前さんいくつだったっけ?もう40は過ぎたんだろう?」

「まだ38です!」

(このセリフも今日は二度目だ。)

またしてもお調子者の浜田の顔が浮かぶ。

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。  婚活小説 連載5回目

《前回までのあらすじ・・・・・合コンでついにキレてしまった圭子は、会社に戻って来たのだが自分が担当する勝木の原稿を、後輩の由美が取りに行ったことでさらに怒りがこみ上げる。》

コンカツ定食?!

圭子はいよいよ会社にいてもしょうがないないので帰ることにした。しかし、当てにしていた勝木がダメになったことでイライラはすでにピークに達していた。おまけに、後輩の由美が原稿を取りに行ったことも許せない。(まあ、勝木先生はあんな小娘なんか相手にしないけどね。)圭子は心の中で毒づいた。しかし、このムカムカは治まらない。なぜか、合コンでのお調子男の浜田の顔が浮かんでくる。「あんたらも、医者目当てに合コン来たんじゃろが?ヘヘヘ」薄ら笑いの声が頭の中でリフレインしている。

 

(もう!腹立つ!まあ、いいか、たまには早く帰ってビールでも飲んでさっさと寝よう!)

(茂木編集長が言っていた婚活バーってどんなとこだろう?)

 

一瞬、圭子の頭をそんな考えがよぎったが、すぐに思い直して地下鉄の駅に向かうことにした。圭子の住むマンションはここから地下鉄で7つ目の駅にある。ところどころに下町の風情が残る空気が、実家のある故郷に何となく似ていて、圭子は気にっている。そのマンションもすでに住み始めて8年が経った。6月半ばにしては涼しい。

(今日はお風呂に入ってたっぷり汗を流そう。そうだ、カプサイシン入りの発汗作用のある入浴剤を入れよう!あ、お風呂に入る前に必ずグラスは、冷凍庫に入れてキンキンに冷やすのを忘れないようにしとかなきゃ!喉がヒリヒリするぐらい冷たいビール飲もうっと!つまみは冷奴ね。そうだ、実家からトマトを送って来てたんだ。トマトスライスにマヨネーズつけて食べよう!)

 

ふっ・・・。

(これって、ただのオヤジじゃない!)

 

圭子が地下鉄の地下通路の階段を下りようとしたときに不意に携帯が鳴った。

「もしもし?」

「もしぃ、もしぃ~!ひょうどうせんぱいれすかあ?わたし、松本由美でえーす!ちょっとだけ酔っぱらってまあす!いまあ、勝木先生に食事をごちそうになってるんすけどお、ちょっとワイン飲みすぎちゃってえ・・。あ、勝木先生に変わりまあす!」

「え?もしもし!もしもし?!」

「おう、勝木だ。どこに行ってたんだよ?早くこの娘を引き取りに来てくれ。軽く飲ませただけなんだが・・・、全くどうしようもない酔っ払いだな。原稿もここにあるが、このままじゃあぶないんでお前さんが今から取り来いよ。場所は何度か、飯を食いに来たことがあるから分かるだろう?レガロだよ。乃木坂の。なるべく早く来いよ!」

勝木は言うだけ言うと携帯を切ってしまった。

「あ、ちょっと!もしもし!」

 

圭子は編集長に電話して代わりの者に行ってもらおうかとも考えたが、由美もまだ若い女性でもあるし、部下の失礼を詫びる必要もあると考え自分で行くことに決めた。

(まったく、どいつもこいつも!勝手なことばかり!)

途中まで下りかけていた、階段を再び駆け上がりタクシーをひろった。

「すみません、乃木坂のイタリアレストランのレガロまで行って下さい!あ、青山1丁目の信号のとこで停めて下さい。」

「・・・・・・・・」

 

こんなときに限って不愉快なことは続くものだ。タクシーの運転手は返事もしない。無愛想きわまりない。ここからだと2メーターぐらいで行けるからあまり金にならない客を乗せたとでも思っているのだろうか。急発進でかなりスピードを上げている。蛇行運転を繰り返しながら、1丁目の信号の角に着いた。ちょうどメーターは800円になっていたところだったのだが、信号の角の先に車を着けたと同時にデジタルメーターが890円に変わった。

(もう!ついてないわ!)

圭子は1,000円札を出してお釣りをもらおうとしたが、今度は先ほどとは打って変わってのろのろとしている。小銭が入った袋をかき回してジャラジャラとわざと大きな音を立てている。もう釣りはいらないとでも言うと思ったのだろうか。あきらかにたくさん小銭はありそうなのに。

(おつりは110円でしょ!100円玉1枚と10円玉1枚よ!なんなら私が探してあげようか?)

「運転手さん、ちょっと急ぐんですけど!」

たまりかねて圭子は声をかけた。

「・・・チッ!」

あきらかに舌打ちのような声が聞こえた。運転手は顔も見ずに、小銭を投げるようにして圭子に手渡した。

 

外に出たとたん、車はまたバタンと勢いよくドアを閉めるや否や、タイヤの音を鳴らしながら走り去って行った。圭子はよっぽどタクシー会社に通報してやろうかと思ったが、名前を見るのを忘れていたことに気がついた。車はオレンジの車体に黒と白のストライプのようなものが入っていた。車体の屋根についている行灯が星のような形をしていたのが見えた。

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(絶対にあのタクシーには乗ってやるもんか!)

 

圭子は怒りでぶるぶる震えながら、勝木と由美がいる店へ早足で向かった。

(まったく、ホントにどいつもこいつも!)

レガロの前に着いた時には、すっかり日も暮れて店の外にはオレンジ色の淡い光がもれていた。こじんまりとした店構えだが、勝木はほぼ毎日通っているらしく、カウンター席のコーナーの奥は勝木の為のリザーブシートになっているらしい。

つづく

 

 

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エンジェルさん、こんにちは。  婚活小説  連載4回目

《前回までのあらすじ・・・・・あまり気乗りのしない合コンに参加した圭子は、お調子男の浜田がムキムキ純情男の田中をからかったことでついに爆発する。「浜田さんでしたっけ?あなた、ずいぶんひどいこと言うのね!」》

コンカツ定食?!

「ハハハ、悪りぃ、悪りぃ。しかしあいつは昔からドジでみんなのいじられキャラなんすよ。あんまり気にしなくても大丈夫っす!」

 

つくづく話しているとイライラしてくる。医者の杉本も嫌なタイプの男だが、この広島出身の浜田とかいう男も調子いいだけの最低な男だ。やっぱり適当なところで帰ろう。料理もほとんど手をつけてないけど、もういいや。こんな男たちと一緒に食事なんかしたくない。杉本を見ると、美由紀と紗子を相手に、偉そうにBMWがなんたらかんたらとウンチクを語っている。美由紀も紗子も車の話なんて興味がないくせに、顔だけはウットリとした表情と真剣な眼差しで話を聞いている。また左を見ると、オタク男の遠藤と茜とかいう女の子が意外にも話が弾んでいる。二人とも変わってるから意外に合うのかもしれない。村上春樹の新作はもう読みましたか?などと話している。

となると、目の前にいるのはお調子男の浜田だけだ。

 

「ところで兵頭さん、本当はいくつなんすか?美由紀ちゃんは紗子さんと同じ33歳とか言ってたけど、ほんまは違うっしょ?!もう40を超えてたりして?!アハハ!」

「?!33歳なんて誰が言ったのよ。私は歳なんか誤魔化そうとも思ってないし、それにまだ38です!」

「え~!さんじゅう~はち~!!」

杉本も遠藤もそこだけしっかり話を聞いていたのか、びっくりした顔で一斉にこっちを振り向く。

 

「ひぇー!やっぱりねえ。しかし38歳とは俺らより3つも年上じゃないっすか?カマかけたら見事にひっかかりましたね。ハハハ。いや、でも紗子さん、いや小島先輩も兵頭先輩も若いっすよ。35歳っていっても十分通用しまっすよ。今は熟女ブームだし、俺らのダチにも年上好みのやついるから今度紹介しましょうかあ?」

「けっこうです!それにあなたに先輩なんて呼ばれる筋合いはありません!」

「・・・・・・・・・」

 

私の一言で場が一気に凍りつく。ちょうどそこへ田中がトイレから帰って来た。頭から水でも被ったのかしぶきを浴びたように濡れている。慌てて頭から水を被ったものの、ハンカチも持たずにそのまま帰ってきたのがあきらかだ。浜田は救われたように、さっきとは違って優しく声をかけた。

「あ!田中、、、鼻血止まった?いや鼻血じゃなかったんだっけ?」

 

場の空気がすっかり変わってしまったが、しかたがない。

「じゃあ、私これで失礼します。今日中にやらなきゃいけない仕事があるんで・・・。」

それだけ言い残すとみんなの顔も見ずに障子を開けて廊下へ出た。あわてて紗子が後を追ってくる。

「圭子、待ってよ~」

「あんたねえ、歳なんか誤魔化さなくてもいいじゃない!しかも何よあの変な男たち。二度と誘わないでよ。はい、会費!おつりは今度でいいからね。」

 

それだけ言うと一万円札を紗子に無理やり渡して外に飛び出した。梅雨入り前の季節はまだこの時間でも明るい。最初から1次会で帰るつもりではいたが、まさかこんなに早く出ることになるとは思っていなかったので、圭子はこれからどうしようかと考えた。紗子にはまだ仕事が残っているとは言ったものの、特に急ぎの仕事があるわけでもなかった。圭子が勤めている出版社は、業界では一応、大手と言われている。圭子は大学を卒業したあとに、新聞社に就職が決まったのだが、2年ほど勤務したあと同じ系列の出版社から女性編集者を募集しているという話を聞き、面接を受けたところ採用となり現在に至っている。

(家に帰っても何もすることないし、とりあえず会社に戻ろう。そういえば勝木先生の原稿がもう出来上がっているかもしれない。)

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勝木先生というのは、圭子の出版社が出してる週刊誌に連載でエッセイを書いている中堅作家だ。中堅とはいえ小説からエッセイ、舞台脚本、最近はテレビのコメンテーターとしても幅広く活躍している。60はとうに過ぎているはずなのだが、日焼けした浅黒い顔と、人なつこい目が歳を感じさせず昔から女性ファンも多い。連載中のエッセイも5年目に突入しているが、締切よりも早めに書き上げてくれるのでいつも安心していられる。圭子も何度か食事に連れて行ってもらったことがあるが、豪快な笑いとウィットに富んだ話は聞いていて退屈しない。時折、下ネタも挟んでくるが、不思議といやらしさは感じない。そういえば勝木もバツイチだ。20以上も年が離れているので、男として意識したことはないが、奥二重の眼で時々見つめられるとドキッとすることがある。本人は意識しているわけではないのだろうが、話しながらじっと目を見つめる癖があるのだろう。何度かその射入るような眼に耐え切れず圭子はそらしてしまったことがある。

(こんな日は勝木先生とお酒でも飲んで笑いたい気分だわ。先生ならきっと私の愚痴も聞いてくれるかも。)

思い立った圭子は、矢も盾もたまらずタクシーに飛び乗って出版社に戻った。出版社の編集部がある5Fに戻ったのがちょうど8時前だった。一番奥の編集デスクに茂木編集長が、足を投げ出しふんぞりかえっているのが見える。この茂木とも付き合いは長い。圭子が書いた物を読んで、入社を後押ししてくれたらしい。当時は髪がまだあり、痩せていて多少はカッコよかったのだが、今は見る影もない。頭のてっぺんは地肌が丸見えとなり、突き出たお腹は太鼓のようだ。茂木もバツイチらしいのだが私生活はほとんどベールに包まれていて謎である。最後の無頼派編集長を自認してやまない。

 

「編集長、ただいま。勝木先生から原稿完成の連絡入ってませんか?」

「う、うう?」ジュルルル・・・。「なんだお前、今日は飲み会じゃなかったのか?それも合コンだろ?さては、ろくな男がいなかったな?ハハ。」半分、寝ていたのだろう。口からよだれが垂れていた。

「編集長!合コンじゃありません。ただの女子会です!それより勝木先生の原稿は?」

「あ、ああ。そうそう、もう出来たからいつもの店に取りに来てってさっき連絡があったんだよ。お前にって言ってたんだけど、いないって言ったらじゃあ誰でもいいからって言うんで、由美に行かせたよ!」

「え!なんで電話してくれなかったんです?」

「しょうがないだろう、お前は合コンだし、、、。それに勝木さんもそれなら誰でもいいっていうからさ。」

 

由美というのは松本由美といって入社3年目の編集部の女だ。さっきの合コンでの美由紀が作られたぶりっ子ならこの由美は天然のぶりっ子だろう。周囲の空気が読めずに、度々、天然の大ボケをかます。字や言葉を知らずに、話し方も語尾をやたらと伸ばしたり、チョーすごい!とか高校生のようなしゃべり方をする。あんまりおかしな話し方をするんで、一度注意したら給湯室で泣いていたそうだ。由美に気があるであろう営業部の男性社員が、必死に慰めていたらしい。「あんまり気にすんなよ。兵頭さんももうお局だからさあー、時々ヒスを起こすらしいんだよね。」とかなんとか言っていたらしい。ご丁寧にこれまた2つ下の後輩の女が教えてくれた。それ以来圭子は、必要以外は由美とは話さないようにしようと決めたのだった。

 

「よりによって松本さんを行かせることはなかったんじゃないんですか?大丈夫なんですか?大事な原稿をまかせて。」

勝木の原稿は字も見やすく、書き直しも少ないので校正は比較的楽な方である。原稿用紙に書かれた万年筆の青い字を最初に見たときは感激したものだ。

 

「まあ、取りに行かせるだけだから大丈夫だろう。終わったら電話するように言ってある。もうお前さんも今日は帰れ!今、流行の婚活バーにでも行って男を見つけたらどうだ?けっこう流行ってるらしいぞ、コンカツバー。」

「けっこうです!編集長、それにそれはセクハラに値します!」

「はは、クワバラクワバラ、、クワバタオハラと・・・・。」

「・・・ホントしょうもない!」

つづく

 

 

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エンジェルさんこんにちは。 婚活小説 連載3回目

《前回までのあらすじ・・・・・友人の紗子に誘われ4対4の合コンに参加した圭子は、全く恋愛対象にならない男たちを目の当たりにして、来なければよかったと後悔し始めていた。》

コンカツ定食?!

「はい、じゃあ次は女性陣の自己紹介です!まず私から・・・名前は松田美由紀です。趣味は映画を観ることと、お料理でーす。最近はお菓子作りに凝ってます!特にケーキとかあ、意外と奥が深いんですよ!この前はチョコレートケーキを作ったんですけどお、作りすぎちゃってえ、たくさん残っちゃいましたあ。誰か食べてくれる人がいないかなあって、いっつも思ってまあす。杉本さんとかあ、甘いものは好きですかあ?・・・・」

 

「コホン。ちょっと、美由紀さん、自己紹介が長いんじゃなくてえ・・・。」

紗子がイライラしながら横から美由紀を遮った。

 

「あ、ごめんなさあい!美由紀、いっつもこんな調子で失敗しちゃうんです。こちらは大学の“大先輩”の小島紗子さん。」

 

「大先輩ってほど、そんなに年は離れてないんですよお。小島紗子って言います。よろしくお願いします。私も、美由紀さんと同じで料理を作るのが好きです。得意な料理はビーフシチューです。煮込み系の料理も奥が深いんですよ。最近はいろんなレストランで食べ歩きして、味を研究してます。でも女独りでレストランとか行きにくいんですよねえ。誰か一緒に食べ歩きしてくれたらなあって思います。杉本さんはお料理では何がお好きですか?やっぱり洋食かしら?お肉とお魚ではどちら?・・・・」

たまりかねた美由紀が、

「先輩、そろそろその辺で・・・」と恐る恐る口を開いた。

「あら、私としたことが、ごめんなさい。オホホ・・・。」

紗子はわざとらしいほど、品を作っている。上目使いの眼元がとても滑稽に写る。圭子はその顔を見ていてまた何となく惨めな気持ちに襲われた。心の中で溜息をそっとつく。

 

「えっと、お隣りの先輩が・・・確か・・・・。」美由紀とは1回しか会ったことがなく、多分、私の名前なんて覚えていないのだろう。横で紗子が私の足をつついた。

「あ、兵頭圭子です。よろしくお願いします。」

「ちょっと圭子、それだけ?!もうちょっとなんか言いなさいよ。趣味とかなんとか・・・。」

紗子が小声でささやく。

「趣味なんか何もありません。しいて言えば趣味は仕事です。」

さっさとこの場を切り上げて立ち去りたい圭子はついつい声が荒くなる。男たちが、固まっているようだ。

 

「えーと・・・。じゃあ最後に私の友人で、斉藤茜。合コン初デビューでーす!あかねちゃん!自己紹介しなさい。」

「・・・・こんばんは・・・・。斉藤茜といいます。趣味は読書です。図書館で働いています。よろしく・・・お願いします。」

消え入りそうな小さな声で、茜と呼ばれる女が話した。真横で見てみると、本当に化粧っ気がまったくなくうっすらとそばかすがある。しかし、よく見るとまつ毛が長く目も大きく愛らしい顔をしている。私が男なら、友人の美由紀や紗子よりも絶対こっちを選ぶだろう。

 

「あかねちゃんも人数合わせで連れてきました~!キャハ!」美由紀が憎たらしいことを言ってる。私が社長ならこんな女絶対にクビにしてやるとこだ。

「さ、さ、“たちまち”カンパイしましょ。あ、”たちまち”って広島弁でとりあえずって意味なんすよ。あ、俺、広島出身なんすけど、ときどき広島弁が出るんよ。わしゃー広島じゃけえのー・・・。菅原文太みたいでしょ?へへへ。」

浜田という男は相変わらず、面白くもない冗談ばかり言っている。圭子は適当なところで切り上げて帰ろうと思っていたが、半分自棄になりもう少し様子を見てみることにした。会費もしっかり割り勘で5千円も取られているのだ。

(料理だけでも食べて帰ろう。)

 

浜田と田中は生ビール、杉本はワイン、遠藤はお酒が飲めないらしくノンアルコールのビールを注文した。一方、女の方は紗子と美由紀が杉本と同じワイン、私と茜がハイボールを頼んだ。

紗子は「私もあまりお酒は強くないんですけどお・・・。今日は杉本さんと同じワイン飲んじゃいます!」などと、相変わらず一昔前の「ぶりっ子」のようなことを言っている。何がお酒は強くない?だ?ザルのくせに。いつだったか二人で、生ビールを5杯ずつにワインを2本、焼酎を1本空けて、最後に入った締めのラーメン屋でまた瓶ビールを3本注文しただろが。

「じゃあ、みんな飲み物は揃いましたか?“たちまち”カンパーイ!」

「かんぱーい!」

「たちまち、かんぱーい!」

「杉本さんもたちまち、カンパーイ!」

a0002_008487浜田の変な訛りの音頭で、4対4の合コンがいよいよスタートしたのであった。

 

 

「ひょ、ひょ、ひょうどうさんは、お仕事は何をされているんですか?」

いきなり私に声をかけてきたのが、目の前のムキムキ男の田中だ。そんなに酒は強くないのか、顔が真っ赤になっている。

「仕事ですか。出版社に勤めてます。」

「兵頭さん、笑っちゃうでしょ。こいつ。緊張すると少しどもっちゃうんですよね。おい、田中、お前緊張しすぎやろ?それになんだ鼻の下。鼻くそがついてるぞ!」

また、浜田が横から口を出す。

「あ!あわわ。」

 

田中はあわてておしぼりで顔を拭いている。案の定、鼻くそだと思われたのは、カミソリで切った血の塊りだったようだ。おしぼりの熱で溶けたのか、塊りは取れたがまた少し血が噴き出している。おしぼりが見て分かるほど赤く染まっている。その光景を見た、浜田は、「お前、今度は鼻血出てんぞ!どんだけ溜まってるんだよ!体ばっかり鍛えてないで、たまには抜いてこいよ!」とからかった。美由紀と紗子が口々に「もうー!いやだあ!」などと騒いでいる。田中はよっぽど恥ずかしかったのか、「ちょっとト、ト、トイレに行ってきます」と慌てて席を立った。だんだん腹が立ってきた私はついに浜田に向かって言ってしまった。

 

「浜田さんでしたっけ?あなた、ずいぶんとひどいことを言うのね!」

つづく

 

 

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エンジェルさんこんにちは。   婚活小説 連載2回目

《女子高時代の友人の紗子に誘われ合コンに参加した圭子は・・・》

コンカツ定食?!

「先輩たち、こっちに座って下さい。あ、亜紀ちゃんは一番年下だからこっち来て!」

美由紀が声をかけた亜紀という女が、うつむきながら静かに席を立った。美由紀の友人にしては、地味な服装をしている。きっとこの友人も無理やり誘われて来たのだろう。押し黙ったまま、亜紀という女の子は入り口近くの席へ移動した。

「大変、お待たせしました!先輩たちも到着しました。」

「すみません!遅くなっちゃってえ・・・。こちら友人の兵頭圭子さんです。私、小島紗子と・・・」

紗子が先ほどとは打って変わって、1オクターブぐらい高い声で言いかけたところで、

「あ~自己紹介はまた改めてということでたちまち席に座って下さい。」奥から2番目の男が立ち上がった。どうもこの男がリーダー格らしい。

「じゃ、みなさん揃ったところで自己紹介といきますか!じゃあ、まず俺から。名前は浜田浩介、ハマコーと呼んで下さい。政界の暴れん坊、俺の息子も暴れん棒!なんちゃって!ハハ!ハハハ!・・・」

「あはは、浜田さあーん、面白い!」美由紀がすかさず合いの手を入れたが、他の友人たちは毎度のことなのか、ニコリともせずしらーっとしている。

「んでもって、俺の隣にいるこっちが、杉本隆弘、親のあとを継いで個人病院の医者やってます。」

浜田という男が紹介した、右奥の縦じまのスーツを着た男が、紗子が言っていた医者らしい。見た目は、色白でひ弱そうな感じだが、銀縁のメガネがいかにも神経質な雰囲気を醸し出している。圭子は一目見て、嫌なタイプだと思った。

いかにも医者を鼻にかけたような、人を見下した目つきをしている。虫の好かないタイプとはこういう人のためにあるのだろう。適当なところで、仕事が入ったとか言って抜け出そう。

「おい、杉本、お前も何か言えよ。」

「あ、ああ。みなさん今晩は。杉本と言います。趣味はマリンスポーツかな。スキューバからサーフィンまで一通りはやってます。一応、クルーザーも持ってますんで、今度、船上パーティーにでもご招待しますね。」

「きゃー!クルーザー!?すごおーい!」また美由紀が黄色い声を上げるやいなや、紗子もここぞとばかり割り込んでくる。

「杉本さあーん。私も海が大好きなんですう!スキューバダイビングもやってまあす。ぜひ、一度クルーザーに乗せて下さあい!」

紗子は愛人時代に社長と一緒に沖縄に出かけ、スキューバダイビングをちょっとだけかじったことがあるらしいが、「あんな魚なんか見てどこが面白いのよ!二度と海なんか行かないわ!」と恵子に話していたことがある。どうも社長とのお忍び旅行がばれて、いきなり沖縄のホテルに本妻が現れたそうだ。社長は紗子を沖縄に置き去りにしたまま、本妻と帰っていったらしい。それから1週間はホテルから一歩も外を出ず、シャンパンやらワイン、料理をルームサービスで部屋に運ばせ、酒浸り、贅沢三昧の日々を過ごしたのだとか。もちろん支払いは社長に全部回したらしい。

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杉本に注目が浴びたのが面白くないのだろう。浜田もすかさずに横やりを入れる。

「医者なんか変わりもんが多いっすよ~!こいつの家は先祖代々医者の家系らしいけど、オヤジも無愛想な人で、昔、家に遊びに行ったときもろくに挨拶もしてくれませんもんねえ。まあ、合コンやるときに医者の友達がいると女の子がすぐに集まるんで重宝してるんすよ。あんたらも医者に惹かれて来たんじゃろう?へへへ?」浜田が薄ら笑いを浮かべた。

「次に俺の隣のこっちが、田中良一。S県警の交通機動隊にいます。暇さえあればベンチプレス持ち上げている筋肉バカです。」

浜田が次に三番目の男を紹介した。

「みなさん、こんばんは!田中です!今日はど、どうぞ、よ、よ、よろしくお願いします!」

田中という男がやたらと大きな声で挨拶した。緊張しているのか少し声が裏返ったようだ。浜田の言うとおりTシャツから覗く胸板も厚いし、二の腕も筋肉が隆々としている。頭も角刈りにしていて、顔の髭剃り跡が青々としている。出がけにカミソリで剃って来たのだろう。鼻のちょうど下のあたりに、切りすぎたのか血のかたまりが出来ている。恵子はそれが鼻クソのように見えて思わず吹き出しそうになった。

「はい、男性陣は以上のメンバーです・・・・・。・・・・・って、遠藤、そこでお前は突っ込めよ!まだ、俺がいるって!」

「・・・?!あ、はい!まだ・・・俺がいる・・・。」

「遅いよ!もういいよ。お前は。今日はずっと黙って飲んでろ!」

「・・・・・・。」

「こいつは遠藤博之。趣味はアニメと鉄道。典型的なオタク。今日は人数合わせで連れてきましたあ!ハハハ!」

「ハハハ、浜田さんひどーい!もうーウケるー!」紗子が相変わらず調子よく相槌を打っている。

遠藤と呼ばれた男は、すこし小太りの男でしきりと汗を拭いている。傍らには何が入っているのか、パンパンに膨らんだリュックサックが大事そうに置いてある。浜田の言うとおり秋葉原によくいるオタクそっくりだ。TVでやっていたAKB48の番組に出ていた親衛隊にも似たような男がいたような気がする。まあ、医者の杉本よりは、まだこっちの方がいい。

圭子はつくづく来なきゃよかったと思った。自分がこの場所にいることが、恥ずかしいやらみじめやらで情けない気持ちになってくる。(紗子には悪いけど、絶対に途中で帰ろう・・・。)

つづく

 

 

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