エンジェルさん、こんにちは。 婚活小説 連載9回目 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・もうすぐ41歳になる冨澤博は暇さえあればカメラを持って愛車のハーレーで出かけている。今日は灯台と海の写真を撮りに犬吠埼までツーリングに来たのだが・・・。》

博は灯台を入れた海の写真を撮りたかったので、満足がいくアングルをあちこち探してまわった。しかし、灯台が大きすぎて海が入らなかったり、逆光になったりとなかなかいい場所がない。周囲をひたすら歩きまわり、何度もシャッターを押したが納得がいく写真は撮れなかった。もともとそんないい写真を撮る腕もないのは言うまでもない。ようやく、灯台が見下ろせる小高い臨時の駐車場のような場所を見つけた。

(ここなら逆光にもならず灯台と海がいいバランスで撮れるかもしれない。)

博は出来るだけ前方で撮ろうと思い駆け寄ろうとした。するとベンチに腰かけていた二人のカップルがいることに気づき足を止めた。見ると肩を寄せ合いながら、ベンチと同化したように静かに海を眺めている。頭を低くしてもたれ合っていたので、最初はよく見えなかったのである。側には、自動販売機がたくさん並んだ簡単な休憩室のようなものがあり、いい具合に逆光を遮ってくれている。左右に移動してみたが、どうしてもカップルがアングルに入ってしまう。その休憩室がある突端の裏側に回れば、きっといいポジションがあるはずなのだが、その為にはどうしてもカップルの前を通らなければならない。博はしばらく考えていたが、そのまま待つことにした。なぜか?恥ずかしいのである。特にカップルに見られるのはいやなのだ。「この人、休みの日に一人で写真撮るのが趣味なんだわ。それに比べて私たちは幸せよねえ、マーくん!」「そうだよ、みーちゃん!」なんて会話がきっと口に出さないまでも、心と心で交わされているはずなのだ。マーくんとみーちゃんはこの際誰でもいいのだが・・・。

(もう、あきらめるか・・・。さっき撮った写真でいいか。どうせ誰に見せるわけでもないんだから・・・。)

博は業を煮やしあきらめて帰りかけようとしたところで、そのカップルが立ち上がるのが見えた。博は思わず、下を向いて顔をそらした。急に動くのも、なんだかずっと見ていたのを、誤魔化すようなので不自然だったからである。博はクールな二枚目の顔なのだが、絵にかいたような恥ずかしがり屋なのだ。しかも恥ずかしがっているような素振りすら人には見られたくないのだ。来月で41にもなるというのに。

それでも目の前を通り過ぎていくときに、ちらっと横目で盗み見てみると、意外にも若いと思っていたカップルが自分と変わらないぐらいの年齢だったことに驚いた。男はおそらく30代後半か40代前半だろう。女のほうはうつむいていたのでよく顔は見えなかったが、男とそんなに変わらない歳だと思う。男の方は、日に焼けた顔にあごひげを生やしていた。真っ白いTシャツが分厚い胸板を一層際立たせている。大きな声で、「何を食べに行こうか?」などと言っているのが聞こえる。おそらく灯台横の駐車場に停めていた車で来たカップルだろう。女はしっかりと、男の腕をつかみゆっくりと歩いていった。

博は二人の後ろ姿が視界から消えるのを待って、前方の突端に向かって歩き出した。

(いい感じだぞ・・・。)

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予想した通り、その場所からみる景色は灯台の白さとコバルトブルーのコントラストがよく映えた。博は夢中になってシャッターを押し続けた。角度や方向を変えながら、たくさんの写真を撮った。ベンチの上に登り、高い位置からの写真も何枚か撮ろうと思った時に、木製のベンチの隙間にキラリと反射する物が見えた。

(う?)

近寄り手に取ると、銀色の輪っかのようなものにつながれた鍵がいくつか付いている。いくつかはよくある家の鍵やロッカーの鍵のような物で、一つはある車のメーカーのエンブレムがかたどってある車のキーだった。

(さっきのカップルが忘れていったのかな・・・。)

博はそのままにしておこうとも思ったが、先ほどの二人ならまだその辺にいると思い、探して届けてやることにした。いなければ灯台脇の駐車場の管理人にでも預ければいいのだから。カメラをキャリーケースに入れ、灯台へ続く車道を足早に下りて行った。すると案の定、さっきの男が下を見ながら登って来るのが見えた。

つづく

 

 

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