エンジェルさん、こんにちは。 婚活連載小説⑭ 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・・・・コンカツ女の紗子から合コンで知り合った従業員、美由紀の友人の亜紀と、アキバ系オタクの遠藤が付き合っていると聞いて驚く。》

 肉食女と草食男②

「ね?びっくりでしょ?」

「なんかそういえば話が弾んでたわよね。」

「そうそう!合コンの後、二人ともいなくなってたから、おかしいなと思ったんだけど・・・。どこに行ってたと思う?」

「?!え、何よ。まさか・・・?」

「違うわよ!圭子が考えてるようなとこじゃないわ。ホテルと思ったでしょ?ふふ。」

「・・・・・・・・。」

(そりゃ、あんたが考えてるんでしょ!)

「なんと、二人でネットカフェに行ってペアブースでずっと漫画読んでたんだって!ハハ、笑っちゃうでしょう?」

圭子は紗子と店の前で別れて、今日行われる対談記事を取材するために都内のあるホテルに向かった。7月に入ってすぐに梅雨が明けた。今年は昨年より1週間ほど早かったらしい。午後3時をまわった頃だが照りつける日差しが、じりじりと刺すように痛い。圭子は紗子から最後に聞いた言葉を思い出していた。

「今は女も男もあんなタイプが意外にモテるのかしら。あーあ。もう誰でもいいから結婚したいわあ!ねえ、今度、コンカツバーっていうところに行ってみない?」

 

紗子が言っていた、あんな女と男のことだが、合コン初参加の亜紀は28歳、全く化粧っ気がなく地味なタイプ。よく見ると長いまつげと大きな目をした可愛い顔をしていた。読書が好きで図書館で働いている。紗子や美由紀とは正反対の女。一方、男は遠藤良一、35歳、見るからに冴えないアキバ系。趣味はゲームにアニメ、鉄道と典型的なオタクである。圭子は亜紀と遠藤が目を輝かせながら夢中になって話していたのを覚えている。紗子のように男経験も豊富でそこそこ色気もある女が、婚活してもちっともうまくいかないのに対し、亜紀や遠藤のように恋愛には疎い人間でもたった一度の出会いでお付き合いが始まることもあるのだ。紗子のように露骨に結婚!結婚!と結婚願望があるわけではないが、亜紀と遠藤のような同じ価値観を分かち合える恋人がいたら楽しいのだろうなあと、何となく羨ましくなった。

 

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(コンカツバーか・・・。一度だけ紗子に付き合って行ってみようか・・・。)

圭子はそんなことをぼんやり考えながら、地下鉄の駅に続く階段を下りていった。

対談の仕事が予定よりも早く終わり、圭子はいったん会社に戻って雑務をこなしそのまま家に帰ることにした。久しぶりに早くマンションに帰って、冷たいビールでも飲みながら対談記事をまとめようと考えたのである。圭子が住んでいるマンションは東京でもまだ下町の雰囲気を残す川べりに建っている。休日にはよく近所を散歩するのだが、小さな古本屋、昔懐かしい雑貨屋、老舗の蕎麦屋などを覗いては一日ブラブラと時間を過ごしている。マンションに着いてポストを開けると、チラシや何通かのDMに交じって宅配便の不在票があるのに気付いた。

(また家から何か送ってきたんだわ。この前トマト送ってきてたばかりなのに・・・。)

圭子の実家は神奈川で、両親も健在だ。長年、教師をしていた父親は数年前に地元の小学校の校長を最後に今は家でのんびりと暮らしている。リタイアと同時にこれまた同じく元教師の母と家庭菜園を始めたのだが、いつも作りすぎては近所に配ったり、圭子のところへ送ってくるのだ。圭子も不規則な仕事をしている為、家で食べる事も少なくいつも冷蔵庫の中で残してしまい、最後は結局捨てることになるのだが・・・。

圭子は酒のつまみを作ろうと思いキッチンに立ったときにインターホンが鳴った。

「こんばんは~!宅急便です!」

モニター画面を見るとよく見かける青いポロシャツを着た宅配業者の青年が荷物を持って立っていた。

「あ、は~い。」

「こんばんは。ニコニコ急便です。兵頭さん、お荷物が届いています。」

やっぱり実家からだ。いつもこのニコニコ急便で送ってくる。配達に来るこのお兄さんもいつもの人だ。もう夜の8時を回っているが、けっこう遅くまで配達をしているようだ。部屋のチャイムが鳴ったので、圭子はドアを開けた。

「こんばんは!ニコニコ急便です。兵頭様からのお荷物をお届けします!ここにサインをお願いします!」

ニコニコ急便の男は日焼けした顔に汗をにじませながら、伝票とボールペンを差し出した。名札を見ると「秦」と書いてある。逞しい体つきをしている。少し汗のにおいがするポロシャツがぴっちりと張り付いていた。年の頃は32、33ぐらいか。圭子は実はこの宅急便のお兄さんが気に入っていた。いつ見ても明るく元気な挨拶で気持ちがいい。少し頬がこけていて、目が大きいところがある俳優に似ている。そういえば最近は宅急便男子なるものが流行っているらしい。「佐川男子」とかいう写真集のような物まで出ているのだとか。彼らの親切な対応や重い荷物も軽々と運ぶ頼もしさに惹かれる女性が多く売れ行きは好調。「おうちに来てくれる身近な王子さま」として、彼らの魅力を存分に紹介した内容になっており、重版も見込まれていると同じ出版業界で働く圭子は聞いたことがある。また、ネットでは「宅急便男子を落とす恋のテクニック」とかいう講座まであるらしい。

「ご苦労様でした!」

圭子はそれだけ言うと荷物を受け取った。いつものようにあっという間の時間である。そこで何か次の展開があるなんてことにはならないのだ。ドラマじゃあるまいし。ましてや、どう見ても自分よりもはるかに年下のこのイケメンがアラフォー女を相手にするわけがないのだ。圭子は、たまにやって来るイケメンの宅急便男子を見ているだけで十分なのだ。婚活をしようと思っても、心から本気で結婚したいのか?と問われればまだ自分でもよく分からない。段ボールを開けてみるとびっしりと野菜が入っている。トマト、きゅうり、玉ねぎ、じゃがいも。横には、水ようかんやゼリーの詰め合わせまで入っている。おそらくもらい物だろう。

(また、こんなにたくさん送ってきて・・・・。前のトマトもまだ冷蔵庫にあるのに・・・。)

圭子はうんざりしながらも、荷物が届いたことを実家に伝えるために電話のハンディホンを手にした。一応、そういうとこは律儀なのだ。教育者の両親の間に育った圭子は真面目なのだ。宅急便男子を自分から口説いたりしないのだ。

「もしもし、お母さん?圭子。宅急便、届いたわよ。ありがとう!もう、しばらく何も送らなくていいからね!」

感謝しつつも薄情な圭子であった。

(とりあえずまだ冷蔵庫に残っているトマトから先に食べなきゃ!)切って皿に盛ってマヨネーズをかけるだけのことだが。

「もしもし、圭子、ちょっと待ちなさい!」

(きゅうりもお味噌つけてモロキューにして食べよっと!)

つづく

 

 

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