エンジェルさん、こんにちは。 エンジェルおじさんの婚活小説 連載6回目

《前回までのあらすじ・・・アラフォーの圭子は友人の紗子に誘われて、合コンに参加したところ冴えない男たちに嫌気が差し途中で帰ってしまう。そこへ酔った部下の由美から電話があり、作家の勝木がいるレストランへ向かったのだが・・・。》

圭子が店の扉を開けると、奥の方の席から勝木が手招きしているのが見えた。

「こっちだ!」勝木の響く低い声がする。

カウンター席が7席にテーブルが3つしかない小さな店だが、今日はテーブルもカウンターも殆ど埋まっている。カップルもいれば会社帰りのサラリーマン風の男もいる。カウンターのコーナー席は、いつも通り空けてあるのだが、今日は由美がいるからしかたなくテーブル席に座ったのだろう。観葉植物が目隠し替わりになる奥のテーブル席は、そこだけ別な空間のように思え圭子はまた嫌な気持ちになった。

(私だって先生とはカウンターでしか飲んだことないのに・・・。)

しかし考えようによっては、勝木がいつもの席に座り、横に圭子を座らせお酒を一緒に飲むということは、それだけで十分気の許せる間柄だと思っているのかもしれない。圭子は無理に自分に良い方に考えることで、気持ちを落ち着かせたかった。

「すみません、お待たせしました。」

「おう!お疲れさん。早かったな。」

「すみません、部下がご迷惑をおかけしまして・・・。」

その部下を見てみると、由美は椅子に座ったままで、眠りこけているようだ。ピクリともしない。微かに寝息が聞こえる。

「いいよ、いいよ。俺が調子に乗って飲ませちまった。ワインはよく飲むし、俺と同じもの飲みたいって言うからさ・・・。」

(それって、さっきの合コンでの医者の杉本の前で美由紀と紗子が言っていたセリフじゃない?!)

圭子は美由紀の、「今日は杉本さんとおんなじワイン飲んじゃいます~!」という鼻にかかったような声を思い出した。

少し口を開けて寝ている由美を見ているとまたムカムカと腹が立ってきた。

「ちょっと、松本さん!しっかりしなさい!起きなさいよ!」

圭子は由美の肩を揺すったが、ムニャムニャ言うだけで起きない。会社に帰ったら、今度こそ徹底的に説教してやる。ごちゃごちゃ言うのなら引っ叩いたって構うものか。次に泣いたことが分かれば、部署を変えてもらうように編集長に進言しよう。

「まあ、まあ、もう少し寝かせといてやれ。お前さんもちょっと飲めよ。少し落ち着け。顔が般若の面のようになってるぞ。」

「!?・・・・・。」

「合コンだったんだって?茂木チャンに聞いたよ。」

(あの、ハゲちらかしはまた余計なことを・・・。)

「いえ、友人が店の女の子に頼んで男の友達を連れてきたらしくて・・・。」

「フフ。それを普通合コンって言うんじゃないのか?」

「・・・・・・・」

そういえばそうだ。確かに私は、いやいやながらも合コンに参加した。紗子みたいに医者に興味はないけれど、どんな男が参加しているのかちょっと見てみたい気持ちはあった。また、あのお調子男の浜田の薄ら笑いが頭に浮かぶ。「あんたも医者目当てなんじゃろ?へへ。」また、カッとなってしまった。

「じゃあ、一杯だけ戴きます。」

圭子は勝木が注いでくれたワインを一気に飲み干した。味も何も分からなかったが、圭子は考える事が嫌になっていた。“とりあえず”酒でも飲んで忘れたいと思った。とりあえず?・・・。広島弁でとりあえずっていうことを“たちまち”って言うんすよ!また、あの浜田の声が浮かぶ。

(何が、“たちまち”よ!)

「さっきから何をぶつぶつ言ってんるんだ?まあ、もっと味わって飲めよ。それじゃあ横で寝ているそのお姉ちゃんの飲み方と、変わんないぞ。」

勝木がまたワインを注いでくれた。もうすでに1本空けたのだろう。注いでくれたボトルもまた空になり、同じ銘柄のワインをまた注文している。勝木も今日は日焼けした顔が赤黒く染まっている。

「ところで「お前さんは、結婚しないのか?」

いきなり勝木が口を開いた。また、射入るような目をしている。目つきは優しいのだが、圭子はこの目が苦手だった。この目で見られると、嘘はつけないような気がするのだ。

「まあ、いつかは結婚したいなあって思ってはいるんですけどね。相手もいないし・・・。今のところ仕事も楽しいし、そのうち何とかなるでしょう。何ともならないか。ハハ。」

「そうか、付き合っているやつはいないんだな?」

「今はいませんねえ。」

「あっちの方はどうしてるんだ?身体だけの付き合いみたいな男はいるのか?」

「先生!変なこと言うのはやめて下さい。そんな人はいません!」

「変なことじゃないだろう?じゃあ聞くがお前さんは一体何のために結婚しようと思うんだね?」

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勝木のお得意のからかいが始まった。今日は、私の代わりに由美で遊んでやろうと思ったものの、飲みだしたとたん由美が酔っ払ってしまって、相手にならず面白くなかったのだろう。私がここに来るのを手ぐすね引いて待っていたような気がする。こうなったら勝木の話に付き合うしかない。ちなみにあっちの方は、3年前が最後だった。当時、付き合っていた彼は大学のサークルの先輩が紹介してくれた友人だった。山形出身の朴訥な人だった。圭子は経験がそんなに多い方ではないので、良くわからなかったが、お世辞にもHは上手くなかったと思う。1年も付き合わなかったが、山形の父が亡くなったので農家を継ぐ為に帰っていった。帰る前に、一度だけ山形に来る気はないか?と聞かれたことがある。圭子が黙って笑うのを見て彼は少し涙ぐんでいたようだ。そして1年もしないうちに紹介してくれた先輩から結婚したと聞いた。彼の家は山形でも有数のさくらんぼ農家らしく、ネットを使った通販をいち早く取り入れたのがうまく当たったらしく、今では会社組織で全国展開をしているらしい。あの時、もし私が彼と結婚していれば今頃はさしずめ社長夫人ということか・・・。紗子なら結婚していただろうか・・・。紗子が“コンカツ”“コンカツ”と大騒ぎしているのを、冷ややかな目でいつも見ている圭子だったが、確かに何の為に結婚するのかなんて一度も考えたことはない。圭子はそんなことを考えながらゆっくりと答えた。

「何のために結婚するかなんて考えたこともありません。普通、結婚するときに何のために結婚するのか?なんて考える人はいないと思いますけど?じゃあ、先生は何のために結婚したんですか?」

「かあ~!これだからなあ。お前さんいくつだったっけ?もう40は過ぎたんだろう?」

「まだ38です!」

(このセリフも今日は二度目だ。)

またしてもお調子者の浜田の顔が浮かぶ。

つづく

 

 

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