エンジェルさん、こんにちは。  婚活小説  連載4回目

《前回までのあらすじ・・・・・あまり気乗りのしない合コンに参加した圭子は、お調子男の浜田がムキムキ純情男の田中をからかったことでついに爆発する。「浜田さんでしたっけ?あなた、ずいぶんひどいこと言うのね!」》

コンカツ定食?!

「ハハハ、悪りぃ、悪りぃ。しかしあいつは昔からドジでみんなのいじられキャラなんすよ。あんまり気にしなくても大丈夫っす!」

 

つくづく話しているとイライラしてくる。医者の杉本も嫌なタイプの男だが、この広島出身の浜田とかいう男も調子いいだけの最低な男だ。やっぱり適当なところで帰ろう。料理もほとんど手をつけてないけど、もういいや。こんな男たちと一緒に食事なんかしたくない。杉本を見ると、美由紀と紗子を相手に、偉そうにBMWがなんたらかんたらとウンチクを語っている。美由紀も紗子も車の話なんて興味がないくせに、顔だけはウットリとした表情と真剣な眼差しで話を聞いている。また左を見ると、オタク男の遠藤と茜とかいう女の子が意外にも話が弾んでいる。二人とも変わってるから意外に合うのかもしれない。村上春樹の新作はもう読みましたか?などと話している。

となると、目の前にいるのはお調子男の浜田だけだ。

 

「ところで兵頭さん、本当はいくつなんすか?美由紀ちゃんは紗子さんと同じ33歳とか言ってたけど、ほんまは違うっしょ?!もう40を超えてたりして?!アハハ!」

「?!33歳なんて誰が言ったのよ。私は歳なんか誤魔化そうとも思ってないし、それにまだ38です!」

「え~!さんじゅう~はち~!!」

杉本も遠藤もそこだけしっかり話を聞いていたのか、びっくりした顔で一斉にこっちを振り向く。

 

「ひぇー!やっぱりねえ。しかし38歳とは俺らより3つも年上じゃないっすか?カマかけたら見事にひっかかりましたね。ハハハ。いや、でも紗子さん、いや小島先輩も兵頭先輩も若いっすよ。35歳っていっても十分通用しまっすよ。今は熟女ブームだし、俺らのダチにも年上好みのやついるから今度紹介しましょうかあ?」

「けっこうです!それにあなたに先輩なんて呼ばれる筋合いはありません!」

「・・・・・・・・・」

 

私の一言で場が一気に凍りつく。ちょうどそこへ田中がトイレから帰って来た。頭から水でも被ったのかしぶきを浴びたように濡れている。慌てて頭から水を被ったものの、ハンカチも持たずにそのまま帰ってきたのがあきらかだ。浜田は救われたように、さっきとは違って優しく声をかけた。

「あ!田中、、、鼻血止まった?いや鼻血じゃなかったんだっけ?」

 

場の空気がすっかり変わってしまったが、しかたがない。

「じゃあ、私これで失礼します。今日中にやらなきゃいけない仕事があるんで・・・。」

それだけ言い残すとみんなの顔も見ずに障子を開けて廊下へ出た。あわてて紗子が後を追ってくる。

「圭子、待ってよ~」

「あんたねえ、歳なんか誤魔化さなくてもいいじゃない!しかも何よあの変な男たち。二度と誘わないでよ。はい、会費!おつりは今度でいいからね。」

 

それだけ言うと一万円札を紗子に無理やり渡して外に飛び出した。梅雨入り前の季節はまだこの時間でも明るい。最初から1次会で帰るつもりではいたが、まさかこんなに早く出ることになるとは思っていなかったので、圭子はこれからどうしようかと考えた。紗子にはまだ仕事が残っているとは言ったものの、特に急ぎの仕事があるわけでもなかった。圭子が勤めている出版社は、業界では一応、大手と言われている。圭子は大学を卒業したあとに、新聞社に就職が決まったのだが、2年ほど勤務したあと同じ系列の出版社から女性編集者を募集しているという話を聞き、面接を受けたところ採用となり現在に至っている。

(家に帰っても何もすることないし、とりあえず会社に戻ろう。そういえば勝木先生の原稿がもう出来上がっているかもしれない。)

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勝木先生というのは、圭子の出版社が出してる週刊誌に連載でエッセイを書いている中堅作家だ。中堅とはいえ小説からエッセイ、舞台脚本、最近はテレビのコメンテーターとしても幅広く活躍している。60はとうに過ぎているはずなのだが、日焼けした浅黒い顔と、人なつこい目が歳を感じさせず昔から女性ファンも多い。連載中のエッセイも5年目に突入しているが、締切よりも早めに書き上げてくれるのでいつも安心していられる。圭子も何度か食事に連れて行ってもらったことがあるが、豪快な笑いとウィットに富んだ話は聞いていて退屈しない。時折、下ネタも挟んでくるが、不思議といやらしさは感じない。そういえば勝木もバツイチだ。20以上も年が離れているので、男として意識したことはないが、奥二重の眼で時々見つめられるとドキッとすることがある。本人は意識しているわけではないのだろうが、話しながらじっと目を見つめる癖があるのだろう。何度かその射入るような眼に耐え切れず圭子はそらしてしまったことがある。

(こんな日は勝木先生とお酒でも飲んで笑いたい気分だわ。先生ならきっと私の愚痴も聞いてくれるかも。)

思い立った圭子は、矢も盾もたまらずタクシーに飛び乗って出版社に戻った。出版社の編集部がある5Fに戻ったのがちょうど8時前だった。一番奥の編集デスクに茂木編集長が、足を投げ出しふんぞりかえっているのが見える。この茂木とも付き合いは長い。圭子が書いた物を読んで、入社を後押ししてくれたらしい。当時は髪がまだあり、痩せていて多少はカッコよかったのだが、今は見る影もない。頭のてっぺんは地肌が丸見えとなり、突き出たお腹は太鼓のようだ。茂木もバツイチらしいのだが私生活はほとんどベールに包まれていて謎である。最後の無頼派編集長を自認してやまない。

 

「編集長、ただいま。勝木先生から原稿完成の連絡入ってませんか?」

「う、うう?」ジュルルル・・・。「なんだお前、今日は飲み会じゃなかったのか?それも合コンだろ?さては、ろくな男がいなかったな?ハハ。」半分、寝ていたのだろう。口からよだれが垂れていた。

「編集長!合コンじゃありません。ただの女子会です!それより勝木先生の原稿は?」

「あ、ああ。そうそう、もう出来たからいつもの店に取りに来てってさっき連絡があったんだよ。お前にって言ってたんだけど、いないって言ったらじゃあ誰でもいいからって言うんで、由美に行かせたよ!」

「え!なんで電話してくれなかったんです?」

「しょうがないだろう、お前は合コンだし、、、。それに勝木さんもそれなら誰でもいいっていうからさ。」

 

由美というのは松本由美といって入社3年目の編集部の女だ。さっきの合コンでの美由紀が作られたぶりっ子ならこの由美は天然のぶりっ子だろう。周囲の空気が読めずに、度々、天然の大ボケをかます。字や言葉を知らずに、話し方も語尾をやたらと伸ばしたり、チョーすごい!とか高校生のようなしゃべり方をする。あんまりおかしな話し方をするんで、一度注意したら給湯室で泣いていたそうだ。由美に気があるであろう営業部の男性社員が、必死に慰めていたらしい。「あんまり気にすんなよ。兵頭さんももうお局だからさあー、時々ヒスを起こすらしいんだよね。」とかなんとか言っていたらしい。ご丁寧にこれまた2つ下の後輩の女が教えてくれた。それ以来圭子は、必要以外は由美とは話さないようにしようと決めたのだった。

 

「よりによって松本さんを行かせることはなかったんじゃないんですか?大丈夫なんですか?大事な原稿をまかせて。」

勝木の原稿は字も見やすく、書き直しも少ないので校正は比較的楽な方である。原稿用紙に書かれた万年筆の青い字を最初に見たときは感激したものだ。

 

「まあ、取りに行かせるだけだから大丈夫だろう。終わったら電話するように言ってある。もうお前さんも今日は帰れ!今、流行の婚活バーにでも行って男を見つけたらどうだ?けっこう流行ってるらしいぞ、コンカツバー。」

「けっこうです!編集長、それにそれはセクハラに値します!」

「はは、クワバラクワバラ、、クワバタオハラと・・・・。」

「・・・ホントしょうもない!」

つづく

 

 

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