エンジェルさん、こんにちは。  婚活小説 連載5回目

《前回までのあらすじ・・・・・合コンでついにキレてしまった圭子は、会社に戻って来たのだが自分が担当する勝木の原稿を、後輩の由美が取りに行ったことでさらに怒りがこみ上げる。》

コンカツ定食?!

圭子はいよいよ会社にいてもしょうがないないので帰ることにした。しかし、当てにしていた勝木がダメになったことでイライラはすでにピークに達していた。おまけに、後輩の由美が原稿を取りに行ったことも許せない。(まあ、勝木先生はあんな小娘なんか相手にしないけどね。)圭子は心の中で毒づいた。しかし、このムカムカは治まらない。なぜか、合コンでのお調子男の浜田の顔が浮かんでくる。「あんたらも、医者目当てに合コン来たんじゃろが?ヘヘヘ」薄ら笑いの声が頭の中でリフレインしている。

 

(もう!腹立つ!まあ、いいか、たまには早く帰ってビールでも飲んでさっさと寝よう!)

(茂木編集長が言っていた婚活バーってどんなとこだろう?)

 

一瞬、圭子の頭をそんな考えがよぎったが、すぐに思い直して地下鉄の駅に向かうことにした。圭子の住むマンションはここから地下鉄で7つ目の駅にある。ところどころに下町の風情が残る空気が、実家のある故郷に何となく似ていて、圭子は気にっている。そのマンションもすでに住み始めて8年が経った。6月半ばにしては涼しい。

(今日はお風呂に入ってたっぷり汗を流そう。そうだ、カプサイシン入りの発汗作用のある入浴剤を入れよう!あ、お風呂に入る前に必ずグラスは、冷凍庫に入れてキンキンに冷やすのを忘れないようにしとかなきゃ!喉がヒリヒリするぐらい冷たいビール飲もうっと!つまみは冷奴ね。そうだ、実家からトマトを送って来てたんだ。トマトスライスにマヨネーズつけて食べよう!)

 

ふっ・・・。

(これって、ただのオヤジじゃない!)

 

圭子が地下鉄の地下通路の階段を下りようとしたときに不意に携帯が鳴った。

「もしもし?」

「もしぃ、もしぃ~!ひょうどうせんぱいれすかあ?わたし、松本由美でえーす!ちょっとだけ酔っぱらってまあす!いまあ、勝木先生に食事をごちそうになってるんすけどお、ちょっとワイン飲みすぎちゃってえ・・。あ、勝木先生に変わりまあす!」

「え?もしもし!もしもし?!」

「おう、勝木だ。どこに行ってたんだよ?早くこの娘を引き取りに来てくれ。軽く飲ませただけなんだが・・・、全くどうしようもない酔っ払いだな。原稿もここにあるが、このままじゃあぶないんでお前さんが今から取り来いよ。場所は何度か、飯を食いに来たことがあるから分かるだろう?レガロだよ。乃木坂の。なるべく早く来いよ!」

勝木は言うだけ言うと携帯を切ってしまった。

「あ、ちょっと!もしもし!」

 

圭子は編集長に電話して代わりの者に行ってもらおうかとも考えたが、由美もまだ若い女性でもあるし、部下の失礼を詫びる必要もあると考え自分で行くことに決めた。

(まったく、どいつもこいつも!勝手なことばかり!)

途中まで下りかけていた、階段を再び駆け上がりタクシーをひろった。

「すみません、乃木坂のイタリアレストランのレガロまで行って下さい!あ、青山1丁目の信号のとこで停めて下さい。」

「・・・・・・・・」

 

こんなときに限って不愉快なことは続くものだ。タクシーの運転手は返事もしない。無愛想きわまりない。ここからだと2メーターぐらいで行けるからあまり金にならない客を乗せたとでも思っているのだろうか。急発進でかなりスピードを上げている。蛇行運転を繰り返しながら、1丁目の信号の角に着いた。ちょうどメーターは800円になっていたところだったのだが、信号の角の先に車を着けたと同時にデジタルメーターが890円に変わった。

(もう!ついてないわ!)

圭子は1,000円札を出してお釣りをもらおうとしたが、今度は先ほどとは打って変わってのろのろとしている。小銭が入った袋をかき回してジャラジャラとわざと大きな音を立てている。もう釣りはいらないとでも言うと思ったのだろうか。あきらかにたくさん小銭はありそうなのに。

(おつりは110円でしょ!100円玉1枚と10円玉1枚よ!なんなら私が探してあげようか?)

「運転手さん、ちょっと急ぐんですけど!」

たまりかねて圭子は声をかけた。

「・・・チッ!」

あきらかに舌打ちのような声が聞こえた。運転手は顔も見ずに、小銭を投げるようにして圭子に手渡した。

 

外に出たとたん、車はまたバタンと勢いよくドアを閉めるや否や、タイヤの音を鳴らしながら走り去って行った。圭子はよっぽどタクシー会社に通報してやろうかと思ったが、名前を見るのを忘れていたことに気がついた。車はオレンジの車体に黒と白のストライプのようなものが入っていた。車体の屋根についている行灯が星のような形をしていたのが見えた。

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(絶対にあのタクシーには乗ってやるもんか!)

 

圭子は怒りでぶるぶる震えながら、勝木と由美がいる店へ早足で向かった。

(まったく、ホントにどいつもこいつも!)

レガロの前に着いた時には、すっかり日も暮れて店の外にはオレンジ色の淡い光がもれていた。こじんまりとした店構えだが、勝木はほぼ毎日通っているらしく、カウンター席のコーナーの奥は勝木の為のリザーブシートになっているらしい。

つづく

 

 

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