エンジェルさん、こんにちは。 婚活ブログ小説 連載30回目 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・ついにガバッといやガチッといっちゃった博は圭子と結ばれる。》

第6章  赤い糸の伝説①

9月に入った。すでに9月の半ばだというのに東京の日中は30度を超える夏日が続いている。それでも朝夕に感じるひんやりとした風が秋が来ていることを教えてくれる。あれから、圭子は毎週のように博のマンションに来ている。最初のデートがマンションでのカレー作りで、二回目はハンバーグ作りだった。近くの洋食屋のハンバーグのデミグラスソースの味が気に入っている博は、前の日から野菜や肉、ワインを煮込んでオリジナルソースを完成させた。さすがにプロの味には及ばないが、それでもちょっと甘目のソースはコクも深みもあってなかなかのものだった。3回目は餃子を作ろう、ということになって二人で近くのスーパーに出かけて食材を買ってきた。大蒜もにらもちゃんと入った正統派の餃子だ。圭子も餡を皮に包むのを手伝ったが、どうやっても小龍包のような形にしかならず、それを見てはまた二人で笑いあうのだった。

(料理教室に通っている気分だわ・・・)

それでも圭子は博の傍に居ることがこの上ない幸福だった。二人で市場やスーパーに出かけて、新鮮な食材を買う。二人で料理を作る。二人で味見をする。二人でゆっくりと食事をする。二人でシャンパンとワインを飲む。(博も2杯ぐらいは飲めるようになった)二人で食器を洗う。(いや、洗うときだけは圭子だ。博は圭子が洗った食器をふきんで拭いて棚に片づける)そして酔い覚ましにコーヒーを飲む。(圭子はまだワインを飲んでいることもある)そして後は・・・。

38歳と41歳の女と男。大人である。愛し合うのは当たり前だ。二人共、時間がないわけではない。しかし最初に結ばれてからは堰を切ったように求め合うのだった。どこかに行く時間がもったいない。映画を観てる時間がもったいない。今まで二人が生きてきた時間と歴史を一気に縮めるためには、部屋で料理を作って過ごす方法は最も最善の方法だった。手を伸ばせばいつでも触れる距離。触れながら会話する。二人とも有効に時間を使いたかった。

博は子どもの頃の思い出、家族の話、会社の話、仕事の話を一つ一つ順を追うように丁寧に語るのだった。特に二人の共通点である博の従弟、茂木(圭子にとっては職場の上司)の話はよく話題となった。

「義男兄ちゃんは、子供の頃からガキ大将みたいな存在でした。よく親戚中の子供を連れて遊びに行ってましたよ。クワガタとかね・・・」

「ふふ、今でも編集長はガキ大将みたいなもんだわ」

博は腕枕をしながらそんな話をした。痩せているように見えても逞しい腕と盛り上がった厚い胸板だった。やっぱり子供の頃にどこかで嗅いだような懐かしい匂いがする。圭子はこの匂いも好きだった。

「ずっと部屋ばっかりで会ってますよね。明日は祭日だしどこか行きませんか?」

「え?明日?!」

「そう、明日。今日はここに泊まりませんか?」

「泊まるって、今日は何も準備していないし・・・。お化粧直しぐらいしか持ち合わせてないし・・・」

「すぐ、そこに遅くまでやってるドラッグストアがあるんです。今から散歩がてら買いに行きましょう!」

今まではどんなに遅くなってもしっかり自分のマンションに帰っていた圭子だったが、明日も祭日で久しぶりの連休だし泊まるのも悪くないなと思い始めていた。何よりまだ博と離れたくなかった。このまま肌を重ねていたい。

「圭子さん、ほら!外を見て!きれいな満月です!」

バスタオルだけ巻いた博がベランダの窓から外を見ている。博が指差す方向には黄色い光に彩られたまん丸い月が見えた。見事な満月だった。少しも欠けていない、今ちょうど満月になったばかりと言ってもいい月だ。

 

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「綺麗ねえ・・・。中秋の名月よねえ・・・」

「でしょう?早く散歩に行きましょう!」

「・・・・・・・。博さん、もう一度こっちに来て・・・」

「・・・・・・・。散歩はもうちょっと後にしましょうか!」

中秋の名月の夜が静かに更けゆく、9月の日曜日である。

つづく

 

 

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