エンジェルさん、こんにちは。 婚活ブログ小説 連載32回目 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・出版社勤務の兵頭圭子38歳。圭子が働く職場の編集長の従弟が冨澤博41歳。結婚を考え始めたアラフォー同士は自然に惹かれあう。そんなとき圭子の母が入院したと聞いて、久しぶりに実家に帰ることにしたのだが・・・》

第6章  赤い糸の伝説③

神奈川とはいっても圭子の実家は神奈川県でも静岡寄りの小さな町だ。電車とバスを乗り継いで2時間近くかかる。圭子は父から電話をもらった翌日の早朝にマンションを出た。博にも電話しようと思ったが、朝も早いし心配をかけたくないと思い簡単なメールだけ送っておいた。意外にもすぐに返事が来て『気を付けていってらっしゃい。お母さん、心配ですね。落ち着いたらお電話待ってます。博』とだけ記してあった。

あれからもう博のところには、2回も泊まった。初めて泊まった次の日は結局、近くのショッピングセンターや商店街をぶらぶらしただけで部屋に戻り、また料理を作ったりDVDを観ながら、まったりとした時間を過ごしたのである。その日もまた連泊した圭子は、博のマンションから会社へ向かったのだ。圭子は日が経つごとに、博のことが好きになっていく自分の気持ちを抑えきれなかった。仕事で遅くなったときも電話やメールで連絡を取り合っている。お互いに久しぶりの恋人である。酸いも甘いも噛み分けたいい大人ではあるが、二人して高校生の初恋のような甘い気持ちに浸っていたのである。

JRの早朝の下りの車内はガラガラで、4人掛けの向かい合わせの席に一人でゆったりと座っている。圭子は駅の売店で買ってきたホットコーヒーを飲みながら、博のメールをぼんやりと眺めていた。大体、二人ともメールは苦手な方である。だらだらとメールを打つぐらいなら、直接話した方が早い、と思うのだ。でも、さすがにこの時間のこの車内では、たとえ乗客が少なくても携帯で大っぴらに話すわけにはいかない。

『心配してくれてありがとう。気を付けて行ってきます。落ち着いたら電話します。  博さんに会いたいわ・・・。圭子』と、圭子にとってはそれでも長い文章の返信をしたのである。おまけに『会いたいわ・・・』などと恥ずかしくなるような言葉まで付け加えて。さすがにハートマークの絵文字はなかったが・・・。

『ありがとう!僕も会いたいよ。東京に戻る日が分かったら教えて。迎えに行くよ。圭子のことをいつも考えている。博』と、博にとっても精一杯長い文章の返信メールがすかさず届く。博にとってもメールでしか見ることが出来ない、恥ずかしいセリフなのだろう。

『私も、博さんのことばかり考えています。土曜日には多分帰れると思うので、また連絡しますね。 』と返信したきりメールは来なくなった。

(面と向かって“圭子”と呼び捨てにしたことはないのにメールでは“圭子”だって!)

 

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圭子は冷えてしまった缶コーヒーを飲みながら、紗子が電話で言っていたことをふと思い出した。

『例の結婚相談所で知り合った、竹之内豊似の男と結婚することにしたわ!』

(まさかね・・・)

紗子が結婚すると言った男が、博のはずがない。竹之内豊にいくら似てるからといって・・・。しかし、結婚相談所に入会したタイミングといい、職業がエンジニアといい、41歳という年齢といい、気になることがいくつもあった。しかし、博は正直に結婚相談所に入会していたことを、打ち明けてくれた。そして紹介状も見ていないし、もう相談所はやめるとも言っていた。紗子から聞いたのが昨晩のことで、お見合いしたのが2週間ぐらい前の話で、プロポーズされたのはつい最近の話だという。これがもし博なら・・・?二股?フタマタ?まさか?冨澤がそんな器用なことが出来るわけがない。初めて冨澤のマンションでキスをしたとき、博は震えていた。声が裏返り、キスも歯と歯がぶつかるだけのぎこちないキスだった。あれが演技だとしたら主演男優賞ものだ。

(まさかねえ・・・)

そんなに悩むぐらいなら、メールでそれとなく聞き出せばいいものを、そこまでは怖くて出来ない圭子だった。

30分ぐらい目をつぶっていたらいつのまにかウトウトしていたようだ。見渡すと車内も少しずつ乗客が増えていた。圭子の実家がある駅は観光の街でもある。近くには有名な温泉もあり、市内にはショッピングデパートもある。山手の方には圭子と紗子が通った県下でも有数の女子高(お嬢様学校として)がある。圭子が駅に着いたのはまだ朝の7:30頃だったが、通勤客に交じって観光客などですでにごったがえしていた。実家まではさらにバスに乗って20分ぐらいかかるのだが、次のバスが来るまでには40分以上もあった。圭子は駅前に客待ちをしているタクシーに乗り実家へと向かった。

朝早く、父には大体の到着時間を連絡していたので、きっと起きているだろう。

(お父さん、朝ご飯とかどうしてるのかな?・・・)

母がいないと何も出来ない父だった。ここ2・3日は洗い物、掃除、洗濯何もしていないかもしれない。

「ただいま!お父さん、起きてる?」

キャン、キャン!!ドアを開けたとたん愛犬が駆け寄ってきた。

つづく

 

 

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