エンジェルさん、こんにちは。 婚活ブログ小説 連載27回目 作 エンジェルおじさん

《前回までのあらすじ・・・冨澤 博、都内で勤務するエンジニア。年収850万の独身イケメン、もうすぐ41歳。兵頭 圭子、出版社に勤務する38歳。気が強く涙もろいアラフォー女。出逢うべくして出会った二人の恋物語がスタートしたのである。今日は博の家で料理をご馳走になるといういきなりの“部屋デート”》

第5章  プロローグ⑤

「すいません、この人参の皮むきをお願いしてもいいですか?」

「あ、はい」

博の部屋に入ったときから、インド料理のようなスパイシーな香りが漂っていた。いろんな料理のレパートリーはあるらしいのだが、結局、博は一番自信があるカレーを選択したようだ。カレーに入れるスパイスも自分で買ってきて調合するらしい。12時前に博のマンションに着いたのだが、博は既にキッチンに立って忙しくしていた。ちゃんとエプロンまで付けている。

何もすることがなく、博の慣れた手つきを見ていたら『よかったら一緒に作りませんか?』と言われたわけである。

「人参は乱切りで、少々大き目でもかまいませんよ」

(人参の皮むき?この包丁でやれっていうのかしら?もしかして私の料理の腕を試してる?)

圭子もカレーは作るが、ここまで本格的ではない。ましてやスパイスを調合するなんて・・・。そんな面倒くさいことなんかしない。実家からたまに送ってくる野菜だって使いきれずに、そのまま腐らせてしまうのだ。

「あ、ごめん!ピーラーはそこの引き出しに入ってます」

引き出しを開けると、料理用のはさみやワインオープナーなどが綺麗に整頓されている。圭子の家のキッチンとは大違いだ。冷蔵庫もちらっと見たがたくさんの食材が、取り出しやすいように整頓されている。

「あのー、私そんなに料理はうまくないんですよ・・・。普段はなかなか料理する暇がなくて・・・。」

圭子は半ば自棄になって人参の皮を豪快に皮むき器を使ってむいた。ガリッ、ガリッと剥いたら皮にけっこうまだ身が付いている。見えないように三角コーナーの生ごみ入れに皮をそっと捨てる。

(もう、いいや!どうなったって。どうせ隠したってばれるんだから・・・)

「出版社の仕事って忙しいんでしょうねえ。でも兵頭さん、いつも楽しそうに仕事をされていて羨ましいなあ」

博は圭子の言い訳にはいつものようにニコニコと笑って答えるだけだった。博は圭子の切った小さくなった不揃いの人参を、何も言わずにボールに入れるとキッチンの戸棚から圧力鍋を取り出した。

「この圧力鍋大きいでしょう?けっこう昔から使ってるんですけど、頑丈に出来ていてとても重宝しているんです。煮えるのが早いから、カレーを早く作りたいときには欠かせないんです!」

そういうと博は牛肉の角切りを手際よく炒め始めた。

「今日はいつも作るポークカレーはやめてビーフにしました」

そこへワインを注ぎジャーッと勢いよくお肉が焼ける音がする。それから先ほど圭子が切った不揃いの人参や、セロリなどを束ねた野菜を一緒に煮込み始めた。

「野菜も溶けるぐらいまで煮込むんで大きさなんてどうでもいいんですよ」

「・・・・・・・・・・・・」

(それって気使って言ってくれたんだろうか?)

「あ、それからこの前言ったようにじゃがいもは入れません。じゃがいも入れたほうが良かったですか?」

「いえ!入れなくていいです」

(じゃがいもなんかどうでもいいわ。しかし何なの?この人・・・)

料理人でもない40歳を過ぎた独身男が、圧力鍋でカレーを作っている。しかもスパイスを調合して。片時も手を休めることなく、一方の手で料理を作りながら、空いた手で洗い物を同時にやっている。前回の取材でも感じたことだが、部屋はとても綺麗でキッチンも片付いている。やっぱりちょっと変わっている人なのかもしれない。

(お部屋の掃除も料理も洗濯も自分で出来るなら確かにお嫁さんはいらないわね)

圭子は何となく悲しい気分に襲われた。自分とは釣り合わない人なのかもしれない。

(私みたいな大雑把な人は向いてないだろうなあ・・・)

 

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それから1時間後テーブルの上には出来立てのカレーのいい匂いが漂っていた。いつの間にか作ったのだろうか、シーザーサラダやタンドリーチキンまで皿に盛ってある。

「カレーに入れたスパイスを使ってチキンを焼いてみました。香辛料が多すぎたから、ちょっと辛いかもしれないけど、召し上がって下さい」

圭子は朝から何も食べずに来たので、正直なところとてもお腹が空いていた。そこへこのカレーの食欲をそそるスパイシーな香り。

『頂きます』と言うなり、矢も盾もたまらずスプーンを口に運んだ。

(美味しい・・・)

博が作ったカレーはとてもサラッとしていて、スープのような食感なのだが、いろんな野菜やお肉の旨みが凝縮されていて深みがある。最初は甘く、後からじわじわと香辛料の辛みが追いかけて来る。牛肉を口に入れると舌の上でお肉の繊維がホロホロと溶ける。圭子は今までに食べたことのないようなカレーを味わっていた。

「いかがです?本当はインド風のカレーなんでお肉はチキンの方がいいんだけど、タンドリーチキンも食べたかったんで、変えてみたんです。チキンもどうぞ!ガブッとかぶりついちゃって下さい」

「本当においしいです!こんな本格的なカレーが食べれるなんて思わなかった。冨澤さんって本当にお料理上手なんですね!」

「たまに作るんで、お金かけていい食材ばかりそろえてるからですよ。誰にでも作れますよ」

博も一緒にカレーを食べながら、淡々と答えた。

「あ、ビール飲みますか?チキンにはビールですよね?僕はあんまり酒が飲めないんで気が付かなくて・・・・」

言うなり博は冷蔵庫から缶ビールと冷えたグラスを2つ持って来た。

「せっかくだから僕もちょっとだけ飲んじゃいます。ハハハ、何がせっかくなんだかわかんないけど・・・」

今日も朝から猛暑で、うだるような暑さだった。おまけに久しぶりに男一人の部屋に上がったのだ。緊張と暑さで喉がカラカラだった。正直なところ冷たいビールでも飲みたいところだった。博は冷えたグラスに上手に7対3ぐらいの割合で泡を注ぐとグラスを圭子に差し出した。

「じゃあ、カンパイしましょう!何にカンパイしようかな・・・。まあ、いっか。とにかくカンパーイ!」

「カンパーイ!」

(くーっつ!ビール美味い!って声出したらまずいわね)

乾ききった喉にビールの炭酸が突き刺さる。タンドリーチキンとの相性も抜群にいい。気が付いたらあっと言う間にビールを飲み干していた。

 

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「あ、ビールおかわりしますか?シャンパンもあるんですけど飲みます?」

コップ半分しか飲んでないのにもう頬が赤くなった博は、冷蔵庫からシャンパンを取り出した。

(シャンパン?!)

つづく

 

 

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